警備員Kの憂鬱

とても短いです。
学校を全力で守るアイツの話

夜…それは我々の仕事の時間。
一日何もせずにじっとしていたせいで、体はすっかり硬くなってしまった。
軽く準備運動をして、今日も見回りを開始する。

我々の主な仕事は、学校の警備である。
それぞれがチームを組んで担当校を決め、その学校を守ることに全力を尽くすのだ。
仕事が出来なくなって辞めていくやつもいれば、新人が入ってくることもある。
別れを惜しみ、新人のことは家族のように受け入れる。
周りには理解されないことも多いが、ここはとても温かい職場なのだよ。

主に外回り担当の僕は、今日も丹念にチェックを開始する。
ゴミを広い、清潔な場所にする。
落し物は拾う。
不審者がいれば撃退する!
ここは、子供たちがさまざまなことを学ぶ神聖な場所だ。
大切な未来を守るためにも、僕らがしっかりと学校を守らなければ。

いつものように校庭を回っていると、いつもは聞こえないはずの音が聞こえた。
これは…不審者発見のサインだ!
夏なんかは、好奇心からやってくる奴が多くて大変なんだよな…
「チームの皆に告ぐ!不審者対応マニュアルⅡを実行せよ!」
指令を出せば、後はもう校内にいる彼らの仕事だ。
音楽室から聞こえる歌声、理科室のほうからあがる悲鳴、調理室から聞こえる刃物の音と逃げる様なドタドタとした足音…
他にも様々な場所から叫び声が聞こえる。
大丈夫。もうすぐ不審者は校内から出てくるだろう。
ほら、慌てふためきながら必死の形相で出てきた。
…なんだ、まだ高校生くらいじゃないか。
「おい、そこの少年たち。次からは昼間に来るんだな。学校とは、勉強のために来るところだ。」
そう言ってやると少年たちはガクガクと頷き、転がるように学校から出て行った。
そろそろ明るくなる時間だ。明日に備えて眠ることにしようか。
「不審者撃退成功。各自所定の位置で、明日に備えるように。」



―次の日、某高校にて
「昨日見たんだよ!学校の七不思議!音楽室のピアノが鳴って、肖像画が歌って、人体模型が動き回る!調理室では包丁に追いかけられたんだぞ!」
「いやいや、嘘でしょ。冗談もいい加減にしたら?」
「しかも最後に俺、二宮金次郎に話しかけられたんだよ!何て言われたか覚えてないけど…」
「はいはい。これに懲りたら、夜の学校で肝試しなんかしないことね。」
                                   FIN

警備員Kの憂鬱

二宮金次郎が夜中に校庭を走り回ってるっていう七不思議がありましたが、多分こういうことなんじゃないかと。

警備員Kの憂鬱

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-11

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