夕立

ザ・インタビューズの「300文字小説グループ」でのお題です。お上手とはいえませんが300文字以内です。

夕立

 恐ろしい勢いで空が暗くなると同時に雨が降り出した。夕立だ。わたしは今、実家の居間で両親を目の前に彼と並んで座っている。
「──本当に申し訳ない──が、わたしで──幸せにできません」
 彼の声は細く、雨の音に消されてしまいそうだ。果たして両親に届いているのだろうか。
「──申し訳ありません」
 雷鳴が轟いた。どこかに落ちたに違いない。彼はまた繰り返す。
 彼は顔を両親に向けない。ずっと下を見ている。両親は彼のつむじ痛みを持って見続けている。
「いいんだ。わかってる。決壊したのは、うちの娘の方だ」
 父はそう言って頭を下げた。彼もずっと頭を垂れている。轟々と雨音は続く。雨が止めば、いい、とわたしは思う。

夕立

夕立

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-10

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