花火

ザ・インタビューズの「300文字小説グループ」でのお題です。お上手とはいえませんが300文字以内です。

花火

 ロンサムはゆっくりと首をもたげて思った。あれが世に言う花火というやつかと。夜空で飛び散る閃光。筋を描く赤い光。ロンサムが首をかしげる間に、いくつもの光が消えていった。まさかあれに、生物が乗っているなどと想像だにしなかった。知る必要もなかった。ただ美しかった。ロンサムは水を舐めるため、ゆっくりと地を這った。水辺に到達して水を舐め、渇きを癒した。その間も花火は夜空を駆け続けた。
 日本では夏に花火が盛大に上がる。それは支配のためでも力を誇示するためでもなく、ただ、納涼と称して刹那の火花を見るためだ。刹那。花火は一瞬だ。ロンサムが見たものは花火ではない。けれど刹那という意味では、花火となんら変わらない。

花火

花火

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-10

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