町役場
ザ・インタビューズの「300文字小説グループ」でのお題です。お上手とはいえませんが300文字以内です。
町役場
今日も役場は平穏だ。30年前から過疎地だったこの町では、ほんの一時期、一部の課が繁忙するだけで、多くの課は閑古鳥が鳴いている。
「暑いわ」
時折顔を見せる婦人が言う。節電対策として役所ではクーラーをあまり効かせていない。夫人に一番近い場所に座っていた女性が「すみません、節電対策です」とテレフォンサービスのように言う。
「ここは毎日、こんなもんだよ」
いつもいる初老の男は不満げな夫人に向かって言う。この男はいつも同じ場所に座って、海を見ている。
突然男は、わずかな声で歌いだす。BillyJoelのPianoManだ。そう、多分明日も今日と変わらない。婦人が横目で唇の端を少し上げる。
そう、そうね。
町役場