町役場

ザ・インタビューズの「300文字小説グループ」でのお題です。お上手とはいえませんが300文字以内です。

町役場

 今日も役場は平穏だ。30年前から過疎地だったこの町では、ほんの一時期、一部の課が繁忙するだけで、多くの課は閑古鳥が鳴いている。
「暑いわ」
 時折顔を見せる婦人が言う。節電対策として役所ではクーラーをあまり効かせていない。夫人に一番近い場所に座っていた女性が「すみません、節電対策です」とテレフォンサービスのように言う。
「ここは毎日、こんなもんだよ」
 いつもいる初老の男は不満げな夫人に向かって言う。この男はいつも同じ場所に座って、海を見ている。
 突然男は、わずかな声で歌いだす。BillyJoelのPianoManだ。そう、多分明日も今日と変わらない。婦人が横目で唇の端を少し上げる。
 そう、そうね。

町役場

町役場

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-10

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