ジョーカー

ザ・インタビューズの「300文字小説グループ」でのお題です。お上手とはいえませんが300文字以内です。

ジョーカー

 たまたま隣に座った女は落ち着きがなかった。スマートフォンをいじり、鞄をまさぐり、バーテンに松ヤニのカクテルを注文し、爪を眺め左手の人差し指を右手の親指でカツカツと叩いた。
 普段なら誰も気に留めない程度の落ち着きのないただの女だ。化粧はやや濃いが下品で美しい。
「ねぇ、最近つまんなくない?」
 目の前に置かれたカクテルを弄びながら女が言った。
「異常気象も原発もピーナツの殻も僕には関係ないんでね。そういうこと自体がわかんないんだ」
 真面目に答えた。
「ホントつまらない人ね」
 女のつま先が僕のイスを蹴った。
「世界中がジョーカーであったら、ジョーカーの意味がないだろう」
 平凡な僕にはその答えしかない。

ジョーカー

ジョーカー

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-10

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted