昼下がりの喫茶店

ザ・インタビューズの「300文字小説グループ」でのお題です。お上手とはいえませんが300文字以内です。

昼下がりの喫茶店

 これはサボりではない、と自分に言い聞かせながら昼下がりに喫茶店で飲む珈琲が好きだ。深く煎ってある豆がいい。ソファは革張りで古びているほうがいい。昼を過ぎてもランチメニューが貼りっぱなしなぐらいがいい。行きつけの喫茶店はそんな平凡なところだ。
 ソファから眺める外界は物理的に壁やガラスで隔てられているものの、そうではない別の世界のようにも見える。ここだけ時間が止まっているように思える。そんなことはなく、マスターの頭の上で時計は秒針を刻んでいるのだが、私はそれを見なかったことにする。
 一日のうちのほんの20分程度のその時間が、おそらく世界の均衡を保っている。僕はそう信じて今日もここで珈琲を飲む。

昼下がりの喫茶店

昼下がりの喫茶店

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-10

Copyrighted
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