夢への一歩
ザ・インタビューズの「300文字小説グループ」でのお題です。お上手とはいえませんが300文字以内です。
夢への一歩
夢と目標は違う。こうなりたいというのは目標であって、夢ではない。夢とは常々妄想にまみれた汚物と言っていい。眠っているとき見るそれは、深層心理が表現されているものと言うが、実際のところ直近の考えなり思想なりが具現化して、瞼や感覚や聴覚を彩るだけのことだ。事実はわかっても解決方法は分からない。だから寝るときに見るそれは相当に無責任な自分自身が生んだ空想に過ぎない。
「夢、ないの」
悪意という単語が辞書にない彼は無邪気に聞く。
「夢、なんて言葉にしたらバカみたいよ。なにを夢っていうの」
「事実だよ。現実、そのものだよ、夢は」
意外な回答だった。
「現実」
わたしがつぶやいたあと、彼が言った。
「結婚しよう」
夢への一歩