いつか、大人になるまで。

「大好きですっ///」

9歳の僕がそう言うと、その人は眉毛を八の字にまげて

悲しげに微笑んだ。

その時は何故そんな風に微笑むのか、

何故この想いに応えてくれないのか、僕には分からなかった。

11歳年上のその人は、陽子(はるこ)さんといった。

陽子さんは、母の友人の子供だとかで僕とよく遊んでくれていた。

いつから陽子さんへの想いを抱くようになったのかはわからない。

でもいつか、大人になったらこの想いを伝えようと決めていた。


あれから、20年がたった。

僕は結婚して、僕と妻と息子の3人家族になった。

陽子さんがどうしてあんな風に微笑んだのか、今ならわかる。

彼女は、その時既に結婚を約束した人がいた。

僕も祝福、出来た。


だけど彼女は数年前、家族と一緒に交通事故で他界した。

まだ僕は想いを伝えてないのに。

いつか、大人になるまで。

いつか、大人になるまで。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-09

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