聖石ハンター プロローグ

初めて投稿します。ジャンルとしてはライトノベルになるのでしょうか。
連載もので、少しずつ投稿していこうと思っています。
未熟者ですが、よろしくお願いします。

プロローグ

プロローグ

この部屋にいる。遥はそう感じた。やつらの後を追って大きな工場のような建物に入り、やっとここまでたどり着いた。自分自身の心臓の鼓動のみが大きく鳴り響いている。
周りに見張りはいない。大丈夫だ。
遥は目の前にある大きな扉をゆっくりと開けた。
 扉を開けた先には黒髪の女性がいた。女性の意識はなく、ぐったりとしている。体中に金属のロープが巻きつき、そのロープの先には巨大な装置が脈打っていた。
「母さん!」
 大きな声を出してはいけない。そんなことはわかっていたが、叫ばずにはいられなかった。
 遥は母のもとへ駆け寄り、母の体に巻きついたロープを取り除こうとした。しかし、ロープは堅く巻きついており、まったく解けそうになかった。そのとき、遥の母、香織のまぶたが静かに開いた。八歳ぐらいの自分と同じ黒髪の子供。毎日のように見ていた顔が香織の目に映った。
「遥……」
 か細い声が遥の耳に届き、顔をあげた。
「母さん! 気がついたの? 安心して、もう大丈夫だから。俺が今助けるから」
 遥は香織を励ましながら、体に巻きついたロープを解こうとする。だが、遥の小さな手ではロープを解くことはできない。
香織はわかっていた。ここから逃げられないということを、こうなってしまってはもうどうすることもできないことを。たった一つを除いては……。
「遥、聞こえる?」
「何、母さん聞こえるよ。まって、すぐ助けるから」
 香織の静かな声に答えながら、遥は必死でロープを引っ張っている。遥の手は皮がむけ、赤い血がにじんでいた。
 だめ! こんなこと頼んではいけない! 願ってはいけない! ――でも、このままでは取り返しのつかないことになる。この子にしか頼めない。この子にしかできない。
 香織はゆっくりと口を開けた。
「遥、お願いがあるの。母さんのお願い、聞いてくれる?」
「お願い? 何?」
 遥の手が止まった。優しい顔で微笑む母の顔を見つめ、遥は母の願いを待った。
 香織がゆっくりと口を開く。香織の声が遥の耳に入っていく。その願いは遥の胸を打ち付けた。遥はその場にたたずむことしかできなかった。
「ビービービービー!」
 けたたましい警報音が鳴り響いた。
「侵入者だー! L‐一〇七号室に侵入者が現れたぞー!」
見つかった! 
遥はそのことを認識することができなかった。警備員の足音が近づいてくる。
「遥、逃げなさい! 早く!」
 香織の鋭い声が遥に響く。
「でも……」
「母さんのことはいいから、早く!」
 母に促され、静止していた体が動いた。捕まるわけにはいかない。遥はその場を逃げ出した。母をその部屋に残したまま……。
 必死に逃げて、母がいた工場を出、遠くへ遠くへと逃げて行った。気づいたときには、工場はどこにも見えなかった……。

聖石ハンター プロローグ

作品名の聖石が全く出てこないプロローグです。
次の話で出てくる予定なので、この続きも読んでいただけたらうれしいです。

聖石ハンター プロローグ

天から与えられた聖なる石-「聖石」と言われる石をめぐる戦いの話です。 聖石なんてありきたりな名前ですいません。ネーミングセンスないですね。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-07

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