さめケーキ?
さめケーキ?
通勤前のある朝。
「パパ、忘れ物ない?」
「ん? えーと、さめケーキの『さ』・・・」
心の呟きを、つい言葉に出してしまった。
「え? さめのケーキ?」と五歳の娘が目を輝かす。
「いやぁ、忘れ物しないための語呂合わせだよ」
『さ』財布、『め』メガネ、『けー』携帯電話、『き』キイ(鍵)と自分で決めていた。
「変なの。普通に確認したほうが早いんじゃない?」と妻が笑う。
「別にいいだろ? 俺はこれが忘れないんだからさ」
「何だ、ケーキじゃないのか・・・」娘が少しがっかりしたようだ。
私は苦笑いしながら、帰りに
娘にケーキを買ってこようと思った。
(了)
さめケーキ?