君と僕をつなぐ刻印 第3話「狙われた瑠都」

登場人物

雪見瑠都 ゆきみ ると

スピア

ヴォル

風戸錬 かざと れん

翼の少女

久狩 くがり

謎の男

翼の生えた謎の少女が現れた次の日、瑠都はいつもよりすこし早目に起きた。理由はもちろんあの少女のことが気になるからである、昨晩ヴォルがつきっきりで様子をみると言っていたが正直、
「絶対寝てるだろ、あいつ」
だって前に「睡眠は最低8時間とらないと死にます」とかなんとかいってたから、てか霊の時点で死んでるんだけどな。
リビングに下りると案の定ヴォルは寝息を立ててぐっすりと夢の世界へと観光に出かけていた。
「だろうなとは思ったけどよ、いびきうるさすぎだろッ!!!」
さきほど瑠都は目覚ましをかけていないのにもかかわらずたたき起こされるように起きた、その正体はヴォルのいびきだったというオチ。なんとも笑えない、
「こんどからこいつの言うことをあんまり当てにしないようにしよう」
鉄より固い決意であった。そして昨日の少女の様子を確認した、どうやらまだ寝ているようだ。
「そーいや、なんか刻印が広がったような・・・・・・」
瑠都は左鎖骨に有る刻印を見る、すると刻印はすでに左胸のあたりを完全に覆い尽くしていた。
「この調子だとおれ速攻死ぬんじゃね?」
とまぁ、朝っぱらキツイ冗談を独り言のようにつぶやく瑠都。いや冗談ですからね、ガチでもうすぐ瑠都さん死んじゃうんで。
「なわけないよな」
「あたりまえです、そんな早く死なれたらこっちが困ります」
「うおヴォル、起きたのか」
いつのまに、
「ムッ、失敬な。私はずっと起きていましたよ」
「うそつけ、さっき思いっきり寝てたろ。デッカイいびきかいて」
「寝たふりですよ、いわゆる忍法です」
「どんな忍法だよ」
「秘儀"うっかり寝ちゃってたように見えるけど実は寝ていないの術"ですよ」
「殴るぞ、コラ」
流石に見苦しい言い訳だろ、てヵなんだよそのめっちゃ長い忍術、もうちょっと略せよ。
「で、この子夜中起きたりとかしなかったか?」
「いいえ、ぐっすりと眠っていましたよ」
「おまえも含めてな」
「だから寝てませんって」
「はいはい、それよりそこの玉ねぎ切ってくれ」
「わかりました、瑠都様」
ひとまずの区切りをつけ二人は朝食の準備をする、スピアはすでに起きてきていて朝のワイドショーを眺めていた。以外にもスピアは朝のワイドショーが好きだった、特に蝶ネクタイをつけた○部さんがお気に入りだそうで。
「ま、今日一日ゆっくりと調べるかな」
「なにをですか?」
「あの子の状態だよ」
「誰が?」
「お前がやらんで誰がやる」
「ちなみに何処を調べるんですか?」
「何考えてたんだ」
嫌な予感120%、
「いえいえ、瑠都様もお年頃なので、ムフ」
お゛ぇぇぇ、男の「ムフ」ってこんなに気持ち悪かったのか。以後気をつけよう。
そんな会話の最中瑠都は突然頭に激痛が走るのを感じた。
「っ・・・・!?」
頭痛がひどく瑠都は立っていることもままならない状態となる、
ガシャーン。
突然お皿の割れる音がリビングに響き渡る、割ったのは瑠都だった。何故か突然全身に力が入らず、まるで貧血にでもなったかのように倒れたのだった。
「瑠都様!?」
「・・・・・瑠都」
瑠都はどうにか意識を持ち直しリビングの壁に寄りかかっていた、頭を抱え冷や汗をぬぐう。視界はまだ定まらず、ノイズのような耳鳴りが瑠都を襲う。
「どうされましたか、瑠都様」
「っ、だいじょぶだいじょぶ。ちょっと立ちくらみがしただけだからね」
そういって瑠都は立ち上がろうとする、だが足に力が入らない。それでも瑠都はなんとかスピア達に迷惑をかけまいと無理やりに立ち上がる、だが次の瞬間視界が真っ暗になり瑠都の意識は途絶えた。

その頃、昨日衝撃的な事実を瑠都から告げられた錬はパソコンで調べ物をしていた。それは昨日ヴォルが行っていた"オリアス"についての情報だった、だが案の定なかなか情報は集まってこない。
「やっぱり世間には知られてないのかなー」
さっきから出てくる情報はゲームの攻略サイトや個人経営のサイトやブログばかりで、スピアのようなオリアスの情報は何一つヒットしなかった。
「刻印、レヴァム、オリアス、か・・・・・・」
頭の中がぐちゃぐちゃになってくる、錬には知らないことわからないことが多すぎた。そして親友の瑠都の力になってあげたい、そんな気持ちと焦る気持ちが錬を余計困惑させる。
錬は気晴らしに散歩に出かけることにした。
家を出る、とりあえずコンビニにでも行くことにした。別に欲しいものなんてないが、まあ強いて言うならばあそこの「挽きたてアイスコーヒー」という錬のお気に入りの一品を買うためだろう。あそこのコンビニは自営業で、何故か街一番の人気コンビニ店だ。
特に夏はかき氷を売っており、その人気は午前中には500個全部売り切れてしまうほどの人気ぶりだ。
「そーいやー最近あそこのコーヒー飲んでなかったな」
去年はほぼ毎週のように通っていたが、いつごろからだろう?錬はあそこのコンビニに行かなくなったコンビニだけじゃない、いつも行っていた大型書店も行かなくなったし、好きだったはずの野球観戦も今はほとんど見ていない。
自分でもさっぱり見当がつかない、気が付いたらいかなくなっていたのだから。
「ま、いまはどーでもいいことか」
すると錬の携帯がいきなり鳴る、着信音からして相手は瑠都だ。
「もしもし?」
<錬様ですか?ヴォルです>
「ヴォル?なんだどーしたんだよ、それ瑠都のケータイだろ?」
<それが大変なんです!!瑠都様が>
「る、瑠都がどうかしたのか!?」
<倒れたんです!!とにかく急いでこちらにいらしてください!!>
錬は血の気が引く、そして返事もせずに携帯を閉じ急いで瑠都の家へと向かった。

「瑠都!!!!」
錬は瑠都の家に着くと乱暴に玄関のドアを開けリビングへと向かった、するとそこには意外な光景が待っていた。
「あら、不法侵入?だめよ、ケーサツ呼んじゃうぞ♪」
「あ、はい、すみません・・・・・」
思わず謝ってしまった錬、その目の前にはヴォルとスピアと"翼の少女"がいた。
「ってええええええええええええ!!!!!」
「うるさいですよ錬様」
「叫びたくもなるわッ!!!なにこの光景、なんでこの子起きてんの?」
「起きたかったからおきただけだよー、そんなに起きちゃだめなの?」
「ちがうわ!!!てヵおまえらなにしとんじゃぁぁぁぁ!!!」
「・・・・・・治療」
スピアがつぶやく、その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「治療?」
「はい、瑠都様は急激に生命力を吸われたため貧血状態になっただけです」
「そ、それってどゆ意味?」
「簡単に言うと瑠都様の寿命が縮んだってことですよ」
「簡単にいいすぎだろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
やばい、絶対的にやばいよ、なにこの人たち完全に瑠都殺す気じゃん。
「だいじょぶだって・・・・・・」
「瑠都様、もう大丈夫なのですか?」
いつの間にか瑠都が起きていた、顔はまだ青ざめているが一応は大丈夫そうだ。
「あぁ、さっきよりは楽になった。それに・・・・・」
そういうと瑠都はそっとスピアの頭に手を置く。
「スピアが泣いてる、こりゃ意地でも起きなきゃいかんだろ」
「・・・・・・瑠都」
「ったく泣いてんじゃねーよ、これから食う朝ご飯美味しくなくなるだろ」
「・・・・・・もう食べた」
「え、なんだよ!!!俺のかっこいいセリフ、何無に帰してんだよ!!!」
瑠都は気付いていなかった、スピアが少し頬を赤らめたのを。
「そ、それより瑠都なんでいきなり倒れたんだ?」
「あ、あぁそれがな・・・・・・」
「ん?」
瑠都はちょっと苦い顔をしながら事の真相を話し始めた。

「も、もう一つの刻印!?」
「っ、うるせーよ錬、鼓膜破れるかと思ったわ」
「い、いやそれはごめん。じゃなくて、それってかなりヤバいんじゃないか!?」
「あぁ、らしいんだが・・・・・」
そう言って瑠都はヴォルの方を向く。
「それが瑠都様の寿命がわからないのですよ」
突然ヴォルが意味不明なことを言い出した。
は、なにそれ。それって俺なに寿命不明?どゆこと、俺どーゆー状態?え、待ってちょっと待って、それって俺いつ死ぬかわからないってこと?それとも永久に死なないってこと?いや、さすがにそれはないか。でもどゆこと?
「それってどゆ事?」
「わかりません」
きたこれ、ヴォルさん爆弾発言だよ。まるで政治家が髪の毛金髪に染めてきてピアスとか開けちゃって「チェケラ」とか言っちゃうくらいの爆弾発言だよ!?核ミサイルのスイッチを愛人とイチャイチャしている間に間違って押しちゃった大統領の「ごめんちゃい」とか行っちゃうくらいの爆弾発言だよ!?
あ、ごめんわからなかった?とりあえず、すんごいこと言ってるってこと。
「普通なら寿命が後どれくらいかわかるんですけど、なにしろ二重刻印なんて前例ありませんし、それに」
「ん、まてよ?」
錬がヴォルの話を突如中断させる。
「そのもう一つの刻印ってなんでできたんだ?昨日の話じゃ刻印は一人につき一つだけしか刻まれないって」
「それもまったく、とにかく前例がまったくありませんので。これから瑠都様がどうなるかすら私にはわかりかねます」
「ちょ、それって瑠都いつ死ぬかわからないってことだろ!?」
「お、落ち着けって錬!!」
錬は興奮し立ち上がる、それを瑠都は必死に止める。
「おい、なんとか言えよヴォ・・・・・・」
錬は「なんとか言えよヴォル」って言おうとしたんだろう、だがそれを突然起こった爆音が遮った。

「で、女神はあつまったのか?」
無音の世界、真っ暗闇の世界で男はつぶやく。
「いえまだ、ですが既に"嘆き"と"煌めき"は揃っております」
その世界で男に答えるものがいた、顔に傷を持ち右腕を無くした"あいつ"は一人刀を持った。
「カタ、つけるつもりか?久狩」
"久狩"そう呼ばれた男は振り向き様に答えた。
「いえ、ただ殺しにいくだけですよ・・・・・・」
久狩は手に持った刀を一度取り出し自分の頬に新しい傷をつけた、まるでそれが何かの証のように。
「愛した女を、ね」
不敵に微笑む久狩に男はただ無表情な笑みを浮かべていた。

君と僕をつなぐ刻印 第3話「狙われた瑠都」

遅くなりました、刻印第3話です。
少々強引な部分もありますが、まあ第4話移行からはどんどんバトルしていくんでよろしくです。
あといっておきますが、ヴォルは男ですのであしからず。

君と僕をつなぐ刻印 第3話「狙われた瑠都」

翼の少女を預かることになった瑠都、だが突然めまいに襲われ瑠都は倒れてしまう。一方そんな瑠都達を無視して大きな陰謀が彼らに襲いかかろうとしていた。

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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-06-26

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