桜ハラハラ
ピンクの花ビラ舞い降る晴天。
彼女は、約束の場所で桜の木を見上げ、
もしこのハラハラ舞う桜の花ビラを捕まえられたら彼はきっとここへ来てくれると信じ、
花ビラを捕まえようと子供のように無邪気に何度も手を合わせる。
彼は、約束の場所に向かいながら、もしあの桜の木の下に彼女が来ていたら…
伝えなければいけない台詞を、どたんばで真っ白にならないように頭の中で何度も繰り返した。
自分で近づいて行くのに、
行きたくないようなそんなジレンマに押しつぶされそうな彼を救ったのは…。
子供のように無邪気に桜の花ビラを捕まえようとする彼女の姿だった。
彼女が、ハラハラ舞い降る花ビラを捕まえた瞬間、彼はそこにいた。
彼女は彼と目が合うと「ホントに来た…」と微笑み。
彼は「何してんだよ」と笑った。
彼女は「何でもないよ」と呟くと急に恥ずかしくなり真っ赤な顔ではにかんだ。
彼は、そんな彼女の顔を見てここに来るまでに考えていた台詞をすっかり忘れてしまい、
照れ臭そうにはにかんだ。
二人は、桜の木を見上げながら。
「良い天気で良かったね」と彼女。
「うん。来年も一緒に桜見に来ない?」と彼。
「絶対、行く…」
はにかみながら笑む彼女の顔を彼は一生忘れないだろう…。
- end -
桜ハラハラ
photo:赤羽根 咲理沙