午前2時

満たされているが、居場所がない。あの人には会いたくない。会いたいけれど、今は会いたくない。
夜の街だけが味方、エメラルドの信号機が美しい。


全部、この泡と一緒に消えちゃってもいい。
私はそう思った。インターネットカフェのフットバス。衛生的によくないと知りながらも毎回利用した。そうだ私は毎日のようにここを利用している。時計の針は午前2時を指す。たった今誰が私のことを考えているだろう。一人?二人か?あてがあるだけ良いではないか。
周りを見ればゲームに夢中な人や漫画を選ぶ人たち。私は何にも興味なし。何故こんなところへ毎日のように通うのか。

仕事は午前1時に終わる。家は自転車で5分のところだ。
終わればさっさと帰れば良いものを、私は家と反対方向へ自転車を走らせる。ドキドキが冬の冷たい風に乗って私の頬を叩く。そう、ドキドキする。私はずっとこのまま?こんな生き方しか出来ないのだろうか。家に帰りたくない。

彼氏がいた。遠距離恋愛中。
本当はちょっと前まで毎日朝まで電話していた。私の帰りが遅い日は健気にも何時まででも待っていてくれた。今はご無沙汰。ふわふわしてよくわからないの、私たちの関係。家のこともふわふわしている。何もかもがふわふわ。ハッキリさせなければいけないものが何かある。それから目を背けている私。そんな気持ちが夜の中自転車で走らせる。オレンジの街頭が寂しかった。

遠距離恋愛といっても、結構会っていた。顔を忘れかけてしまうほどでは無い。

ネエ、アタシはアイニイクケレド、アナタハアイニハコナイノネ。


彼は仕事をしていない。生活パターンは私と同じだ。何故こんな恋愛をしているのだろう。彼は本当に私のことが好きなのか。「好き」や「愛してる」とはよく言うが、言葉なんて簡単なもの。言っちゃえばおしまい。証拠もくそもない。ねえ、言葉にはそんなに意味ないよ、重いものでもない。私は何を信じて生きているのだろう。夜が私を掴んで離さない。今夜も自転車で夜道を行く。

ふわふわふわふわ。
私は彼が好き。彼がどんなであろうと、例えばどんな悪事を働こうとも好き。

愛しぬくと決めたのだ。私を好きであるのか疑問を感じたときも、なるべくそれをかき消そうとした。何処かそ知らぬふりの彼。いつかいつか私のこの想い彼に届く。報われる。

辛かった。私は軽度だがうつ病を患っており、なにもかもが滅茶苦茶に見えるときがある。
そんな私を彼は心配してくれたこともない。そんな時、無性に寂しくなり外へ飛び出す。
もう日が沈んで信号機の色や看板の色が映える。退屈な昼の時間を過ごした人たちが今度は楽しそうに街を歩く。私の心は、もう空の空の上。何もないところへ飛んでいきいたい。

興味もなにもない画面。
今日もインターネットカフェで過ごす。お金なんていくらかかっても良い。

何処ぞの誰かの日記等を見たり、タレントのHPなどを見る。
つまらない。彼は今どうしてるのだろう。浮気でもしてるかもね。小さくため息をし、ヘッドフォンつけてYoutubeをボーっと眺める。

朝だ。
又、夜をインターネットカフェで過ごしてしまった。
ため息ひとつ。ああ、いけない、隣の人に聞かれてしまう。
他人のため息なんてなるべくなら聞きたくないものである。

家に着くと、テーブルに宅配便の小さな箱が。
中には高そうな指輪。彼からだった。
手紙を読むと、彼は内緒で仕事に就いてたらしい。

数十万の指輪だ。

私のふわふわした足は少し地についた。

嬉しくて、ベッドの上を転がりまわった。
しかし、私は、その日の夜も家には帰ることがなかった。

(了)

午前2時

午前2時

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-01

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