幸福論だよ。いいや、嘘はダメだ

  一章『幸福部(地獄)へようこそ』
『幸福』、『幸せ』について話をしよう。
普通、幸せや幸福をを感じる時は、自分の夢や何かが達成をすると気に感じると某サイトに書いてあった。では、夢や希望とは何か、某悪役キャラが「夢や希望は欲望を綺麗に言い替えた物だ!」と、熱く語っていた。それに対して主人公キャラの反応は言い訳臭い詭弁を言い放って敵キャラをボコボコにした。また、幸せは恋人や家族がいると幸せを感じると某ドラマで言っていた。そのセリフを聞いて家族のことを考えたが別に幸せだなんて思わない。で、結局俺は何を言いたいかというと、幸せなんてお先真っ暗な人間が頭を打って見た幻想にすぎない。だから、幸せなんて探してもどこにもない!以上。
「よし・・・終わり」
 書き終えた原稿用紙をひとつの束にして、シャーペンを筆箱に戻す。
「終わったか?当麻」
 その言葉には反応せずに席を立つ。原稿用紙をしっかり持ち教室から出る。行き先は決まっている。『幸福部』と言う名の地獄だ。

 数日前の出来事
夏休みも終わり、高校1年生の二学期が始まろうとしている。俺こと橋本当麻(ハシモト トウマ)は長い宿題を徹夜で終わらせて目にクマを作りヨレヨレしながら朝飯を喰らう。朝飯を食い合わると目を覚ますために台所で冷水をかぶる。少しすっきりして学校の準備にかかる。昨日の夜中のうちに大体は終わらせてあるから制服に着替えるだけでよかった。身支度を済ませ学校へと足を動かす。
学校へと歩いてると知っている顔がちらほら見える。夏休み明けなのに全く久しぶり感がしない。
「やぁ、トウマ」
 後ろから名前を呼ばれたが反応はしない。こんな朝っぱらからテンションの高い声を出すのは俺の知ってる限り一人しかいないからだ
「朝の挨拶のできないのかい。とうま」
 そういって、俺の隣に駆け寄る。身長はとても小さくてぱっと見る限り小学生。本人はコンプレックスとは思っていないらしい。声も高く顔もどちらかというと童顔。こいつとは昔からの付き合いになる。
「昨日から徹夜なんだ。勘弁してくれ」
 コイツの名前は、近藤修也(コンドウ シュウヤ)なんというか悪友みたいなやつだ。だけど、全く趣味はあっていないけどな。
「トウマが徹夜なんて珍しいね。何やってたの」
「宿題だよ」
 あまり大声を出せないので聞こえるか聞けないかわからないぐらいの音量で答える
「これはまぁ律儀にやるね」
 半ば呆れたように修也も答える。
「お前は終わらせたのか?」
 その言葉に修也は少し驚く。そして食い気味で答えた
「驚いた。当麻がそんな意味のない質問をするなんて・・・恐るべし徹夜パワー」
 もう、この反応で分かった。してないなコイツ
「忘れたり、やってなかったら補習だぞ」
「わかってるさ」
 得意げに会話を続ける。
「いいのか?」
「宿題なんて忘れてなんぼのものじゃないか」
「違うだろ」
「世の中はどうであれ、僕はそう受け取っている」
 得意げに言ってるが誇らしいものじゃない。馬鹿なんだこいつ・・・
「それよりさ。決めたの?そろそろ決めないとやばいんじゃない」
 ひとつトーンを落として修也が聞いてくる。内容はわかってる。それに対して俺はため息一つで答えた。
「まだ決めてない」
「ほんとに決めないと。この西口高校は生徒全員が部活に所属しないといけないんだよ」
 それも十分承知だ。そこまで世間知らずでもないし、本気でどうしようか考えてる。
「そんなこと校則には一言も書いてないんだけど」
「暗黙のルールってやつさ知ってるだろ」
 からかったつもりだが、こいつにはわからんらしい。やっぱ馬鹿なんだこいつ
「当麻ぐらいだよ、まだ部活決めてない生徒なんて。この学校は腐る程部活はあるんだから興味ある部活がきっとあるからさ」
 説明乙です。まとめると、この西口高校の特徴としてあげられるのは、部活の量だ。どれだけあるのかはよく知らないけど、修也も言ったとうり腐る程ある。そのせいか、いつの間にか暗黙のルール(笑)が出来上がった。『西口高校生徒は何かしらの部活に所属しなければならない』まだいくつかのルールが存在らしいがよく知らん。
「まぁじっくり考えながら決めるよ」
 それを聞いて修也はにっこり笑顔を作った。ゆっくりする時間があれば、だけど・・・。そんな余談をしてると学校が見えてくる。校門には何人かの生徒と教師があいさつ運動をしている。全くこれほどうざいものはないよ。
校門を抜けて自分の靴箱に向かう。修也は何かしらの話をしているが相槌しかしてないので何話してるのか分かんない。
 靴箱に靴を置くと修也が何かを思い出したかのように話しかける。
「あ、そうそう。今日うちのクラスに転校生が来るんだってよ」
「へぇそうなんだ」
 眠くてあんまり集中して聞き取れなかった。ちなみに俺と修也は一緒のクラス。ていうか普通こんな情報手に入れれないよな
「どんな子かな?やっぱり美少女かな?」
 めくるめく妄想をしている修也を置いて自分のクラスに進む。やっぱりってなんだよ。
クラスでは転校生の話でもちきりだった。え?なに?俺しか知らなかったの?
女子も男子も和気あいあいでどんな子か予想している。俺は自分の机に着き暇だったので視線は窓に向ける。秋の空なのにまだ夏の香りがしていた。
ホームルームのチャイムがなる。クラスの連中は自分の席についてそわそわする。そこまで期待しなくてもいいじゃん。期待はずれだとあれだろ?失礼だろ?
先生が勢いよくドアを開ける。いつものようにくわえタバコで無駄に鋭い目つき。それさえなければそこそこモテる容姿をお持ちなのに。あぁ昨日合コン失敗したんだ
先生は何やらクラスに言っている。だが、徹夜のせいか意識が朦朧として聞き取れない。あれ?目の前がくらく・・・・なっ・・

バンッ!その音共に頭に痛みを感じる。その痛みに反応して目を覚めた。
「寝てたのか」
 徹夜がこんなに響いていたなんて、普段してないことをするもんじゃないな。
「私の授業で寝るなんていい度胸だな」
 目の前には、鬼の形相を浮かばせたうちの担任が・・・・・
「いや、これは・・その・・・」
「廊下にたってろ!」
 一喝されて、渋々廊下に出る。でも少し寝たからスッキリした。廊下に出ると俺より早く修也が立たされてた。俺が出るのをみてニカッと笑う。バカかこいつ
「トウマさ、なんで寝たんだよ」
「そんなのわかるだろ。徹夜のせいだよ」
「いやいやそう言う意味じゃなくて」
 修也は窓に指さす。俺は指のさした方に目をやると俺の席
「俺の机じゃねぇか」
「違うよ。その手前の席見てみろよ」
 言われたまま、俺の席の手前の席を見る。そこには見知らぬ顔があった。それはクラスの連中じゃない。どう見ても知らない顔だ。
「誰だよ」
「噂の転校生だよ。俺の予想どうり美少女だろ?」
 否定はできなかった。とてもスラッとした体つきに少し膨らみが見える胸周りがあるが、それを上回る顔つき。黒がみロングで印象はどこかのお嬢様。って感じの―
「いいなぁ。トウマは寝てたからわからないけど隣だぞ席」
 えっ?マジかよ!やべぇテンション上がってキョドりそう!
「・・・トウマさキョドるなよ。キョドったら完璧に意識してることになるからね」
 イヤミのように修也がいいよってくる。あれ?こいつ俺の心読んでる?
「そんなことしねぇよ」
 嘘です。すみません
「で、お前はなんで立たされてるんだよ」
 大体は予想できる。宿題を忘れたからだろ。
「必要以上に転校生に興奮したからだよ」
 違うのかよ。しかも必要以上って何?どんだけ興奮してんだよ
「お前ら、入っていいぞ」
 先生からお声がかかったので俺と修也は教室へと戻る。一学期の間隣がいなかったせいか少し緊張するな・・・。
「よろしくお願いします」
 転校生は俺が席に着くのを見て挨拶をしてきた。
「あぁ、よ・・よろしく」
 俺も挨拶を返す。アレ?俺、キョドってないか?
 転校生は、俺の言葉に見向きもせずに黒板に意識を向ける。・・・うん、まぁそれが普通だけども
そのまま何事もなく授業が進む。最初の頃は転校生に意識が集中してるクラス内だが実力テストが近いのかすぐにいつもの教室へと変わる。そんなもんだろ、人間ってのは。アレ?俺、今いいこと言ったんじゃないのか?え?全然?あ・・・うん・・・・ごめん

授業が終わりまた教室が騒がしくなった。転校生の方に人口密度が集中してるので俺は修也の近くに駆け寄る。それを待ってたかのように修也は笑顔で出迎えてくれた。キモい
「どうだった?となりは?」
 からかう修也もまたキモかった。俺は、修也のからかわれるのはそこまで好きじゃながどう答えても言い寄ってくるので
「どうもこうも、転校生。俺には興味ないようで全然会話しなかった」
「うん。見てたから知ってる」
 あーそうなんだ。今の少しイラっとしたんだけど、殴ってもいいよね?
「知ってるなら聞くなよ」
 それに微笑する修也は何か言いたそうだったように見えたが、何も話さない。
「そろそろ部活きめないとなぁ」
 ため息と共に愚痴のように漏れる。それを聞いた修也は何か閃いたように笑顔が弾ける。あ、アレ?修也の頭の上に電球が見える!?
「そうだった、忘れるところだったよ。そんなトウマにいい話が!」
 結構楽しそうだな、おい。
「なんだよ」
「部活だよ部活!あのあと授業中にいろいろ調べたんだよこの学校の部活」
 お前は進級する気はあるのだろうか?
「で、トウマにピッりの部活を見つけたんだよ」
 へぇーそうなんだー(棒読み)修也は手帳を取り出すとパラパラとめくり始める。
「いろいろ怪しけどトウマにぴったりなんだその部活の名前は―」
 その時、勢いよく教室のドアが空いた。その勢いは教室の音をかき消した。皆の会話が止まり、聞こえるのは教室に入る足跡だけだった。
みんなが一点に集中する。ドアから入ってきた人は多分この学校に通ってるなら知ってる有名人。名前は田村 咲(タムラ サキ)。この街で一番大きな病院の医院長の娘。成績優秀でスポーツ万能。去年のテニス大会で全国優勝を成し遂げたのは彼女のおかげと言っても過言ではないほどの成績を残した。また、記録ではなく容姿もなかなかのもので一言で例えるなら完璧主義のお嬢様。
田村先輩は迷いもなく転校生のところへ行き囲んでいたクラスメイトを散らばせた。未だ視線は彼女らに向いている。田村先輩は転校生に何かゴニョゴニョ耳打ちをしている。話が終わると二人は教室から出て行った。
「何やってたのかな?」
 修也がボソッと言ってきたがそんなのわかるはずのないこと、昔の人も言ってるだろ凡人は天才の考えてることはわからないって
数分後、いつものようにクラスでざわざわし始める。そして、二時間目のチャイムがなる。
二時間目になっても一向に転校生は帰ってこなかった。二時間目終了すると流石にクラスで噂が流れ始める。二人は百合だったとか、百合だったとか、百合だったの!?とか。
「いやぁ流石に心配するよね」
 修也が教室を見渡しながら近づいてくる。
「そうだねぇ」
「あれ?あんまり心配してない?」
 疑問そうに聞いてくるが、からからかってる。だって目が笑ってるもん☆
「あれだよ。興味ないから」
「でた!トウマの決まり文句」
 なんだそれ。初めて聞いたぞ
「まぁ、トウマが人に興味持とことって全くないし。見たことない」
「おいおい、心外だな。確かに人に興味を持つのはまれだけど今はお前に興味を持ってるつもりだぜ」
 お、なかなかいいこと言ったんじゃないのか?今日はいいことあるかもだぜ?モテ期来るかもだぜ?
「ごめん。俺はノーマルだ・・・」
「は?」
 修也は顔色を急に変えた。ていうか青ざめてる体調でも悪いのかな?
「確かに今はBL流行ってるかもだけど・・・・ないわー」
「ちょっお前は何かしらの勘違いをしているぞ!?」
 一部の女子が腐ったような歓声を上げてるのは俺の幻聴だ。・・・・やべぇな
「お、俺は友達として言ったんだよ!それ以上でもそれ以外でもない!」
 慌てて弁解する。これじゃぁホモ疑惑をかけられてしまう。それじゃこの先青春バッドエンド・・・・
「ちょっ俺マジでノーマルだから・・・・半径2メートルから近寄らないで」
「いやいやいや待て待て待て、お前はすごく勘違いをしている。そしてバカだ」
「最後罵倒された気が・・・・」
「マジで違うから」
「わかぁた。わかぁたから・・・そこから近寄るなよ!!」
 目がマジでした。
「信じてねー!」
 もう泣きそうだよ。あ、死にたくなってきた・・・
「冗談だよ冗談。ちょっとからかっただけだよ」
「まじか?マジなのか?」
 修也はいつもの笑顔でコクっと頷く。それを見て力が抜けて肩が落ちる。なんだよいいこと言うと俺に不幸が来るのか?
そんな感じで授業開始のチャイムが鳴る。俺はそそくさと自分の席に着く。まだ転校生はやってこない。だが、始まって数分後転校生が何食わない顔で教室へ入ってくる。先生には「保健室行ってました」と軽く説明をし自分の机に座る。何もなかったように見えるが気になるな。先輩と何してたんだろ・・・おっと百合の噂が酷くなってるぞ☆
だが、これも一時のアレであって、また授業に集中する。ちなみに教科書をすべて忘れた俺は授業を聞くのはとてつもなく詰まんない。視線はまた空に向けられる。外は雲ひとつないいい晴れ空だった。
「ねぇ、先輩と何してたの?」
 あまりにも暇なので聞いてみる。べ、別にあんたのことを心配なんかしてないんだからねっ!・・・・・・・誰得だよ
「あなたには関係ないことです」
言うとおり。大正解ですよ転校生。・・・はぁ寝るか。

授業が終わり昼休みの時間となる。いつもどおり修也と弁当を食べる。食事中はほとんど無言だが今日は違った。
「あ、忘れてた」
「ん?何が?」
 修也は嬉しそうに笑顔で話し出す。
「部活だよ。いい部活紹介するっていったじゃん」
 あぁ、そんなこと言ってたな。俺は無言で弁当を食べ続ける。修也の話もちゃんと聞いているがどっちかというと聞き流してる?
「いいところで田村先輩が来たからさ」
 そうだったな・・・・もう忘れてた。俺は弁当を平らげて修也に目をやる。それを見た修也は食べるスピードを上げて話を進める。
「それでさ・・・・・えっとどこまで話したっけ?」
 食べながら話すなよ。
ジト目で修也を見ると伝わったのか修也は弁当を食べ終えて口の中を空っぽにする。
「悪い悪い。でさどこまで話したっけ」
「知らん」
「じゃぁ最初から話さないとかなぁ?」
 少し黙り込んで何か考えてるような素振りをする。なんか・・・ムカつくな
「俺、昼休みはなんやかんやで忙しいんだよ」
「なんだよ。なんやかんやって」
「大人の事情だよ」
 子供度だろお前。弁当を片付けながら受け流し
「だったらさっさといけよ。俺はあとでもいいから」
「いや~なんだかんだで今日はこのまま学校早退だからさ」
 修也は苦笑いに近い笑顔をする。もう弁当箱はカバンに戻してどこかえ行く準備は済ましてる。
「今度はなんだかんか」
「まぁそれはどっちでもいいけど」
「携帯があるだろ。メールで送ってくれ」
「あ、それいいね。わかった了解」
 そう言って修也は教室から出て行った。俺はその場で見送った。何かと忙しんだな、あいつ。なんか部活も掛け持ちしてるらしいし、はぁなんて疲れる生き方だよ。俺には無理無理
それから月日が・・・って時間が過ぎて放課後、みんながワイワイガヤガヤしながら部活の準備。俺は修也から受信したメールを開きながら部室棟へと向かう。修也のメールにはネトゲ部とオンラインゲーム部の間にあるらしい。何が違うのかよくわからん
こんなかんじに部活動が腐る程あって・・・・って部室棟の何階だよ。はぁ一つ一つ探さないといけないのか・・・めんどくさいな。帰るか
階段を下りてると遠くの廊下の壁に『幸福部この先→』と書いてある紙を見つけた。
「はぁ」
 俺は頭をかきむしり長い廊下を進む。
 今思えばこの時帰っとけば俺の日常は変わらなかったと思う
道しるべの通りに歩いているとどんどん周りが古くなっていく、旧校舎に入ったらしいこんなところに部室を置くのはもの好きしかいない。なんか怪しくなってきたぞ
 『幸福部はここ!』可愛らしく書いている紙のとなりの部室は旧ネトゲ部と旧オンラインゲーム部。間違いないここだ
少し間を置いて部室のドアを開ける。ドアはギィーギィーと悲鳴を泣き時代を感じる。
「しつれいしまーす」
 そこまで大きな声ではないが静かな教室なら聞こえるだろうのボリュームで存在アピール
 教室はどこか不思議な雰囲気で風がカーテンを押して教室へと入ってくる。カーテンの隙間からは夕日が綺麗に差し込んでくる。教室にはひとり奥の方で文庫本を読んでいて何かこの教室に雰囲気が似ている。転校生はすぐに俺の方に振り向く。
「入ったら?」
 彼女はその一言を言うとまた文庫本に目をやる。俺は言われたとおり近くにある椅子に座る。彼女は俺が教室に入っても全く動じない。俺は心底彼女に疑問を持つ、いやそうゆうことじゃなくて
「なぁ、なんでここにいるの?」
 俺はこのモヤモヤを解消するべく彼女に質問をする。
「それはこちらのセリフでもあるのだけど」
 まぁそうだよな。
「おれは、あれだよ。入部だよ入部。仮入部」
 ガッツリ彼女はシカト。それにしてもこの部はこいつ一人かよ。誰かいないのかよ部員
「あれ?お客さん?」
 ドアの開く音共に男の声が聞こえる。俺はドアの方向に視線をやるとそこには二人の生徒が立っていた。一人は田村咲。もうひとりは知らない男だ。けど・・この感じは上級生?
「こんにちわ」
 ぺこりと頭を下げると、田村先輩は先に部室に入り何か奥の方でゴソゴソと何かやっている。
「こんにちは」
 上級生男子はぺこりと頭を下げて丁寧に挨拶をする。なんて紳士なんだろう。
「あ、自己紹介が遅れました。僕は佐藤 和也(サトウ カズヤ)と申します。2年生です。えーっと」
「あ、すみません。俺は橋本当麻です。1年で友人にこの部活を紹介されまして」
「そうですか・・・・。ゆっくりしていってください」
 和也先輩は終始笑顔で会話してくれた。うわーこれがモテ男子だわ。俺は椅子に座り教室をきょろきょろ見る。本棚にはたくさんの本が並んでいる。題名はいろいろあるが統一性がある。
「この部活って何するんですか?」
 誰に向けたわけでもない。誰かが答えるだろうそう思って聞いてみた。
 バンッ!頭にまた痛みが走る
「イタッ」
 頭の方に手をやると白紙の原稿用紙がある。
「なんですかこれ?」
 頭を叩いたのは田村先輩だった。一番近くにいたからそう思う。田村先輩は顎で支持するが何やってるのかわからない。
「こちらです」
 声がかかった方に視線をやる。佐藤先輩は笑顔で手を振る
「先ほどなんの部活かっておっしゃりましたよね」
「はい」
「説明したいのはやまやまなのですがこの部の伝統で・・・・」
「その原稿用紙にお前が思う『幸せ』を書いてこい。そうしたら教えてやる」
 後ろの方で佐藤先輩のセリフを奪う田村先輩。俺は原稿用紙をみてため息を漏らす。
「はぁ・・・」
 メンドクサッ・・・。なんでこんな部に入ろうとしたんだろ
「まぁそうため息つかず・・」
 苦笑しながらやる気を起こそうとしてる。佐藤先輩・・・あんたの顔は笑顔という仮面でもかぶってるんですか?
「これ、絶対ですか?」
 原稿用紙をつまみ上げ露骨に嫌そうな顔をする。やーりたくねー
「どういう部活か知りたいなら書いてこい」
 田村先輩は一向にその言葉しか言わないらしい。俺はため息をついて部活を見渡す。注目すべきは本棚くらいしかない。
「・・・・アレですか?『幸せ探し』でもいうですか?」
 それを聞いて佐藤先輩は目を丸くしてこっちを見る。図星じゃねぇーか
「驚いた。なぜわかったんですか?」
「なぜって本棚にある本のタイトル見ればバカでもわかりますよ。全部『幸せ』についての本ですし7割がた幸せ探しみたいなタイトルでしたから」
 それを聞いて田村先輩が俺が見える席についてまた紙を渡す。
今度はなんだよ
「入部届け・・・」
 紙に目をやるとそれは入部届け
「今日中に提出しろ」
 それだけ言って本棚に行き一冊の本を取る。マジで言ってるのか?いや、そのつもりで来たけどもさ
「じゃ、じゃぁこれ書かなくていいですよね」
 佐藤先輩に確認を取るとコクっと頷いた。おぉやった。なんか怪しい部活だけどやってることはただ本を読むだけだし別に苦にならない。興味は注がれないが自由だしフリーダムだしよし!入ろう
「分かりました。これ書けばいいんですね」
 入部届けはいたって簡単な作りで部活名と自分の名前とクラスを書けばいいもの3分で済ませた。
「できました」
 近くの机に置き先輩方の反応を確かめる。田村先輩は「確認した」と、いってポケットの中に入部届けをしまった。
「それじゃ自己紹介だ」
 その一言で田村先輩と佐藤先輩が俺の目の前に横並びする。
「おい、橘お前も来い」
 先輩は奥の方でずっと文庫本を読んでた転校生を呼ぶ。転校生は嫌そうな顔を一瞬出してこっちに駆け寄る。
「まずは部長の田村咲。2年だ。それから右から副部長の佐藤和也。2年で偽善者だ―」
「えっ?」
 今本人を目の前にして悪口のセリフが聞こえたように思えるんだが
「偽・・・善・・者?」
 佐藤先輩は笑顔でこちら見る。俺が指をさし確認を取ると
「うん。偽善者」
 なんていい笑顔なんでしょう。佐藤先輩はものすごい笑顔で偽善者ということをカミングアウト
「何か問題でも?」
 田村先輩は鋭い目つきで俺を睨みつける話に割り込んだからだろう。ごめんなさい
「あの、いいんですか?っていうかもう本人公認?」
「偽善者に偽善者と言って何が悪い」
 田村先輩、それは「馬鹿に馬鹿って言って何が悪い」みたいなアレですか?怒られますよ?
「いいんだ。僕も認めてる。僕は自他共に認める偽善者なんだ。これに関しては怒ったりしないから大丈夫だよ。当麻くんも僕のことは偽善者って言っていいんだよ」
「丁重にお断りします・・・」
 佐藤先輩は、自他共に認めるドMの変態でした
「続けるぞ。その次は橘真実(タチバナ マミ)お前と同じ1年。大嘘つきだ」
 これまた斬新な自己紹介でしたね。あれですか?田村先輩は一生デレないツンデレですか?それともただ単に悪意で言ってるんですか?
「お前の名前と学年」
「あぁ、俺は橋本当麻。橘さん?と同じ一年。えっーと・・・」
 これって俺も罵倒すればいいの?でも自分で自分を罵倒って佐藤先輩以上の変態になるんじゃ・・・
「お前性根が腐ってるだろ」
 田村の姉御冗談きついっすよ。え?これって自己紹介っていう名の罵倒大会なの?
「え、えっーと・・・・」
 正直反応に困る。ここで怒っても俺は悪くないが田村先輩は空手の黒帯で数々の大会を制覇したって聞いたことある。正直に言おう、反撃が怖い・・・
「以上だ。何か質問は?」
 まるで軍事訓練かのようにテキパキと喋る田村先輩に少し愕然としていくつかの質問をする。
「まず第一になんで俺は性根がひねくれてるんですか?」
「自分で理解してないのか?」
 ohそれはスゲー失礼ではないのか?
「すみません・・・」
 少し怒りを加えて誤ると田村先輩はため息をついて俺をジト目で見る。おいおいここは俺のストレス構築所か?
「性根が腐ってるとは堕落して救われないってことだよ。心の持ち方、他人との考え方、価値観、すべてほかの人とは違う」
「すみません。お言葉ですが、それは個性とは違うんですか?」
「個性とは違うわ。個性とは自分らしさのことよ、今は色々なことを個性というらしいけどあんなのゆとりの言い訳でしかない」
 うーん・・・確信を付いていないような気がする。性根が腐ってるね・・・そういや一時期修也にも言われたっけ・・・・「トウマは性根は腐ってるけど考え方は好きな考え方だ」ってあの時はただ馬鹿にされたと思ったけど・・・
「いいですよ。もう、俺は性根が腐ってるで」
 呆れた感じで終了の合図を鳴らす。頭を使うのはもう疲れた。
「あら、あきらめがあ早いのね」
 面白そうに橘がクスクスと笑う。うーんなんかイライラする
「疲れただけだよ。この人下がる気ないし」
「ほかに質問は?」
 元気いいですね。田村先輩。もう俺は燃えたよ燃え尽きたよ・・・
「じゃぁ最後に、この部活って具体的に何するんですか?見る限り『幸せ』についての本を読んでるだけですけど」
「幸せ探しだ。それ以上でもそれ以下でもない」
 もういいよ。わかったよ、わかった。お前らいいから『幸せ探し』で検索しろ。婚活パーティーのサイトが五万と出てくるから
「もういいです・・・俺帰っていいですか?」
「そうか。なら私たちも帰るとするか」
「待ってくれ」
 ドアを開け用とすると田村先輩に呼び止められた。
「なんですか?」
「言い忘れたことがある」
 そう言って、田村先輩はにっこり笑って
「ようこそ、幸福部へ」
 この瞬間逃げ出したくなりました。

幸福論だよ。いいや、嘘はダメだ

感想をもらえると嬉しいです。
プロフィールにメアド載せませたので
そこに送ってもらえると
嬉しいです

幸福論だよ。いいや、嘘はダメだ

嘘つきの少女、偽善者の少年、愛を知らない少女、腐っている少年 間違えだらけの幸せ探し 絶対幸せになれない奴らが 幸せを探すお話 シリーズ第1弾

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-01

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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