狂兵士

これは夢。もしくは、そう遠くない現実。

私の頭上を鉛の弾丸が貫いて行く。
嫌な音が耳から離れてくれない。
積み上げた土嚢に身を隠しながら、私はその手に持ったライフルを狙いもせずに撃ち放った。
おそらく運が良かったのだろう。何発かが敵の足に当たり、突撃してくる敵兵が何かを叫びながら崩れ落ちる。そこに仲間の手榴弾が投げ込まれた。
悲鳴、断末魔、血の臭い。私は目を背けた。
「引けェ! 砲撃がくるぞ‼」
誰かが叫んだ。空には放物線を描く火の玉が見えた。
仲間は必死で走った。私はその場で身を竦めていた。
そんな私のはるか頭上を通り越して、迫撃砲の炎は仲間の血肉を焼いた。
逃げた仲間は死んだ。立ち竦んだ私と動けない者は生き残った。
引いた者は、死んだ。
私はゆっくりと立ち上がる。ただ、立ち上がった。
敵の弾丸が身体を掠め、何発かが肉を割いた。
痛みは感じなかった。
私はすでに、恐怖の闇に呑まれていた。
放たれた弾丸が私のヘルメットを弾き飛ばす。それを皮切りに、私は前へと駆けた。
走って、走って走って走って。殺して。
私の頭の中は、次第に白い霧に閉ざされて行った。

突然空が見えた。雲一つない、青い空だ。
私の頭から離れてくれなかった霧ももうない。
不意に、その景色が歪んだ。
もう銃弾の音は聞こえない。叫び声やうめき声すらも、無かった。
ただあるのは虚しい静寂。無数の屍と、それを踏みしめる私自身。
おもむろに私は己の手を見た。そこには見慣れぬ拳銃が一丁、握られていた。
弾はもう一発しかないそれを、私はしばらく見続けた。
どこか懐かしいそれは、いつか戦友と呼んだあの男のものに似ている気がした。
いや、きっとそうなのだ。

私は何を思うでもなく、ただそっと、その銃口を口に含んだ。

狂兵士

すいません。駄作で申し訳ないです。ハイ。

狂兵士

結局、勝者なんていないんだよ

  • 小説
  • 掌編
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-01

CC BY-ND
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