矛盾
とかく現在の経済価値観は、生命保険に代表されるような、大いなる矛盾が支配している。そう思いませんか?
中国は春秋時代(紀元前770~221)に矛盾という言葉が生まれたらしいが、これ本当あるか?
中国は春秋時代の事、晋が三国に分かれ春秋戦国時代となり、市場では様々な物が売買されていた。
日用雑貨や食料品、薬に酒・・・・その中には武器を売る商人も居た。
武器を売るくらいな商人なので、腕ぷしは強く気も短かった、そして武器しか売れない程商売が下手だった。
否、元々下手でなかったが、来る客は武器を求めるような、乱暴者やならず者である。
他の市場の店主同様に、にこやか、爽やかではやっていけない、何しろ武器を売っているのだ。
売った武器(矛)で凄まれたこともあるので、いつも盾を隠し持っていた。
又、盾を売るときは矛を隠し持っていた。
そんな武器商人の元に、一人の客がやって来た。
長い髭に、みずぼらしい髭、名前は陳だった。
この陳はこの市場では有名なクレーマーで皆の嫌われ者だった。
今日も買う気もないのに、様々店を冷かして回っていた。
そして決まって若い女の店員を眺めては様々な文句をつけていた。
「おい、この前ここで買った食器、あの店の方が安かったぞ、」とか
「これ半額にしてくれよ、ここが綻びかけている」
そんな感じで市場をまわっていて偶然、武器屋にたどり着いたのだった。
無愛想な店主が仁王の様に構えている、それを見た陳は、からかってやろうと思った。
「おい、この矛は良く切れるのか?」
店主は何も答えず、ジロッと陳を見た、そして頷いた。
「ほーどれ位切れるのか?この矛で切れない盾はないのか?」
又店主は頷いた。
店主と陳のやり取りを見て人が集まり始めた、(あのクレーマーの陳が、又文句付けている)
人々は陳が嫌いだったが、陳は好かれていると思っていたので、有頂天になってきた。
(皆、俺の事を応援してくれている、この無愛想な武器屋がここから逃げ出せば、俺は英雄だ)
「じゃあ、この矛で切れない盾が有ったら、ここから出ていくか?」
又店主は頷いたが、イライラし始めた。
そして口を開いた、「お前に売る矛はない、そんな貧弱な体ではこの矛は持てない」
陳は「何!俺が貧弱だと、よーしそこまで言うなら俺と勝負しろ」
店主は、今度は首を振ったが、陳は収まりがつかない。
「おい!店主そうやって逃げるのか?これでも喰らえ」
そう叫ぶと売り物の矛に手をかけた、誰もが息を呑み身構えた。
その瞬間、店主は隠してあった盾で陳を殴り倒した、無残にも陳は泥だらけになり鼻血が噴出した。
そして店主は何事もなかったように盾を隠してまた仁王の様に店番を始めたので
気を失って倒れたままの陳を、人々は見向きもせずに散り始めた。
陳を憐れに思った人が誰かに言った「武器屋に文句付けるなんて、バカなことするから、矛を求めて盾で殴られるのさ」
「 アハハ、違いない、矛を求めて盾で殴られるなんて、おかしな話だな」
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矛盾2
武器屋にひどい目に遭わされた陳。
しかしこの男は、殴られ泥だらけにされても恥とは思はない、したたかな男だった。
傷が癒えると、再び市場に出かけ酒屋に入った。
一杯、二杯、、、そして三杯。
杯を重ねるごとに、この間の事が悔しく思い出された。
「なぁ、店主よ、南門の外れの武器屋は、なんなんだぁ、いきなり盾で殴りやがって」
「はぁ~それはお気の毒に、武器屋ですからねぇ、乱暴者、、、かもしれませんねぇ」
主人は下手に刺激しないように言葉を選んで返した。
「そうさ、本当に乱暴な奴だよ、この市場に似つかわしくない男だしよ、どうにか追い出せないか?」
「まぁ、でも税をきちんと納めている以上我々では、どうにもこうにもです。」
主人は話が長くならないようにまとめたが、陳は酔ったこともあり憤った。
「よーし、俺が武器屋を始めて繁盛させて、あいつの店に客が行かなければ、あいつの店は潰れる、
あいつの店を潰してやろう。」
そういうと立ち上がり、更に
「良いか?店主よ、俺が商売の見本を見せてやる、勘定はつけとけ!!」
酒屋を飛び出した。
陳は飛び出したものの、何処で矛やら盾を仕入れるのか?さっぱり分からない。
「困ったなぁ、どうしたものかぁ。、、、
当て所もなく市場をウロウロしていると、一軒の武器屋を見つけた。
あの武器屋と違い年寄りが、店番をしていていかにも、潰れそうな店だ。
陳はこれは、良い店を見つけた、これ幸いとばかりに店の年寄に話しかけた。
「おい、この店はもう潰れそうじゃないか?俺が店番してやるから、奥でお茶でも飲んどけや」
いきなり言い放ったが、年寄りは黙って手提げ金庫を持って奥に入ったので早速、口上を始めた。
「さぁ、さぁ、皆さま、この矛を見てください、こんな素晴らしい矛はめったに見ることができませんよ、
何しろよく切れる、切れない物などございません」
良く通る声で、身振り手振りも面白い、なんせ酔っているので気も大きい。
「矛、この矛は珍しい物ですが、皆様方の為にと、今日は赤字覚悟でございます。
今なら、この矛をお買い上げになると、なんと、な、な、なんと世界最強の盾をお付けいたします」
「おおー」見物人、いわゆる野次馬が声を上げた。
陳は有頂天になった、しかしまだ全然売れていない。
その時、「じゃあためしに一つ貰おうか?」おおよそ矛も盾も必要じゃない人物が買った。
まさか売れると思っていなかったが陳はさすがに商売人だった、
奥の年寄を呼び出して値段は盾矛を合わせたより少し安くして売らせた。
それでも利益が出るのはわかっていた。
それが口づてに評判をよび予想に反してどんどん売れた、そしてとうとう売り切れた。
陳は、いやがる年寄りから手数料を取り酒場に戻った。
「どうだ、店主みたか?これが商売で俺が商売だ、分かるか?」
祝杯を挙げていると、あの年寄りが現れた。
「オー、爺さん、礼など要らんぞ、それ一杯おごるぞ」
杯をつきだすと、その爺さんの後ろには見たことのあるあの武器屋が立っていた。
「またお前か?、年寄りから手数料をふんだくり、武器相場の値段を下げやがって」
あの武器商人はそういうと、今度は矛で殴り盾で押さえつけた。
そして「もう矛盾にはかかわるな、つぎは命がないと思え」
言い残して去った。
陳は血を流しながらもこう言った。
「相場が下がっても売れる方が良いに決まってるじゃないか?」
すると酒屋の店主が言った。
「イヤ~それは一時だけで、それだといつか、儲けなしで商売することになりますよ」
「いーや、そんなことはないさ」「いつかそうなりますよ」杯はどんどん重なり陳は、
酔いつぶれるまで飲んだ。
酔いつぶれた陳の体には矛と盾の傷後が付いていたので、陳の事を矛盾と市場の人々は呼んだ。
現在の市場経済における、デフレスパイラルは中国は春秋時代まで遡るとか・・・・・・・・・。
矛盾
手数料という名目で、徴収される金、合わせたら一体幾らになるのか!