気付いてよ...バカ -2-

2です!!
まだまだ続きます!!

<登場人物>
*岡野 夢空(おかの むく)
*井上 奏哉(いのうえ そうや)
*椎名 由仁(しいな ゆに)
*黄瀬 悠夜(きせ ゆうや)

...その他

位置について...よーいドン

-2-


始業10分前になって走ってきたけど、
先生の死角になる席は空いてなくて
仕方なく後ろの方に座った。

「あぁー、眠い。」
「ここで寝たらバレるよ。」
「んー、そうだね。」
「頑張ってノート取りなよ。
って言っても、あと少しで終わりだけどね。」
「そうだね...あっ。」
「どうしたの??」
「メガネ忘れた...。」
「バカ。」
「由仁ぃー、終わったらノート貸して。」
「仕方ないな...あっ、ダメだ。」
「えっ??」
「私、貸す約束してる。」
「そっか...」
「ごめん。他の子に頼める??」
「うん。大丈夫。」
「ごめんね。」
「メガネ忘れた私のせいだし。
気にしないで。」
「うん。...夢空。」
「ん??」
「あの人、奏哉に似てない??」
「えっ??」
「ほら、あの人。」

由仁が指差した方向を見ると...

「あれ、奏ちゃんだよ。」
「奏哉??
あいつ、心理学取ってたっけ??」
「奏ちゃんは心理学取ってないよ。」
「じゃあ...なんで??」
「分からない。」
「気になる子でもいるのかな??」
「えっ!?」
「バカ、声がでかい!!」

一瞬だけ教授と目が合った気がするけど
素晴らしいタイミングで
チャイムが鳴って授業が終わった。

「はぁ...、危なかった...。」
「まったくだよ。」
「...あっ、奏ちゃん。」

奏ちゃんがいた席を見ると、
そこにはもう奏ちゃんはいなかった。

「...行っちゃった??」
「そうかもしれない...」
「てか、電話してみたら??」
「そうする!!」

鞄から電話を探す。

「夢空、私この後に世界史あるんだけど、
一人で平気??」
「大丈夫。
私、この後は経済学だから。」
「じゃあ...移動しながら電話する??」
「うん。」

片手にケータイを持って教室を出た。


「あっ。」

扉を開けてすぐ、奏ちゃんが立っていた。

「やっと来た。」
「えっ??」
「これ。」
「...私に??」
「うん。」

差し出されたもの、
それはルーズリーフだった。

「...これって...」
「さっきの授業、
夢空、メガネしてなかったでしょ??」
「うん。」
「だから、ノート取るにも
見えなくて困ってるんじゃないかって。」
「...ありがとう。」
「良かったね夢空。
あっ、ごめん。私もう行くわ。」
「うん。行ってらっしゃい。」
「じゃあ、またあとでね♪
奏哉もバイバイ。」

そう言って、由仁は走って行った。

「ハハハ、相変わらずだよね。
由仁は、かっこいい。」
「うん。...奏ちゃん、この後授業は??」
「んーと、経済学。」
「あっ、一緒!!」
「じゃあ、一緒に行く??」
「行く!!」

「前の方が良いでしょ??」
「えっ??」
「メガネ、ないんでしょ??」
「あっ、そっか。」
「バカだなー。」
「ちょっと忘れてただけです...。」
「そう??」
「そうです!!
奏ちゃんは後ろ行く??」
「どうしようかな。」
「...??」
「フフフ、横いいですか??」
「もちろん!!」

しばらくして授業が始まった。

「夢空、授業終わったよ??」
「んー...私、やっぱり経済学苦手。」
「毎回言ってるよね。」
「だって嫌いなんだもん。」
「その“嫌い”っていう先入観が
苦手にさせてるのかもよ??」
「んー...」
「コツさえ掴めば面白いのに。」
「それ、中学の時にも
言われた気がするんだけど...」
「うん、言ったよ??」
「...やっぱり。」
「まぁ、頑張ろうよ。
夢空はやろうと思えば出来るんだから。」
「やれば出来るって言えー。」

奏ちゃんが何気なく触れる肩が熱い。

「さて、俺はそろそろ行くよ。」
「行くって??まだ授業あるの??」
「もうないけど、
なんか教授に呼ばれたから、
そろそろ行かないと。」
「そっか...」
「うん。じゃあまたね。」
「バイバーイ。」
「由仁によろしくね。」
「うん。」
「じゃあ。」

奏ちゃんは、いつもと変わらない歩幅で、
スピードで教室から出ていった。

私も出ようと荷物を片付けてると
後ろから足音が聞こえた。

「夢空ちゃん♪」
「ん??あっ。」
「久しぶりだね。」
「うん。」

彼は、黄瀬悠夜(きせ ゆうや)
由仁ちゃんの彼氏。

「ねぇ、由仁知ってる??」
「知ってるよー。
黄瀬くんの彼女でしょ♪」
「そうなんですよ!!
もうめっちゃ可愛くて...って、
そうじゃなくてね??」
「分かってるよ。
由仁は世界史だったよ。」
「そっか。ありがとう。」
「私も由仁のとこ行くし、一緒に行く??」
「そうしようかな。」
「じゃあ、行こ。」

キャンパス内を歩いていると
先月に比べて、葉が緑になってきていた。

「5月かー。」
「そうだねー。」
「夢空ちゃんは今年花見した??」
「したよー。黄瀬くんは??」
「サークル内ではやったよ。」
「由仁とは行かなかったの??」
「んー、行きたかっんだけどね
お互いに都合が合わなくて...
あっでも、来年は行くよ。」
「もう約束してるの??」
「したした。
来年は一番に行くんだから!!」
「えー、黄瀬くんは別にどうでもいいけど
由仁の一番は毎年私なんだけど??」
「残念でしたー。
いいじゃん、今年は奏哉と行けば??」
「...出来たらいいよね。」
「早く付き合っちゃえばいいのに。」
「無理。」
「...上手くいくと思うんだけどな。」
「どうして??」
「だって、なんだかんだ言っても
奏哉は夢空ちゃんに優しいでしょ??」
「んー...そうなのかな??」
「それに、奏哉の近くにいる女の子って
夢空ちゃんくらいだよ??」
「そんなことないよ。」
「あるの。
さっきの経済学の時間だって、
夢空ちゃんの隣にいたじゃん??」
「あれは...私がメガネ忘れたからで」
「ほら。」
「ん??」
「優しいでしょ??」
「うん、まぁ。」
「...もっとさ、自信持ちなよ。」
「自信か。」
「そうそう。
...あっ、あれ由仁じゃない??」
「えっ??」

視線を向けると、
校舎の壁に寄り掛かってる由仁がいた。

「由仁ぃー!!」
「...悠夜!?」

由仁は黄瀬くんがいることに
結構、驚いたみたい。

「授業、お疲れ。」
「ありがとう。
さっきから悠夜に連絡してたのに
出なかったから、
今日は来てないのかと思ってた。」
「ごめん!!
家に置いてきちゃった。」
「はぁ...じゃあ見てないか。」
「なにを??」
「映画の時間。
さっき調べて送ったんだけど。」
「あぁ、ごめんね。」
「いいよ。」
「これから行ける??」
「レポート出したらね。」
「じゃあ...俺1度家に帰って
車で迎えに来ようか??」
「迷惑じゃない??」
「全然。」
「じゃあ...お願いしようかな。」
「うん。じゃあ、またあとでね。」
「バイバイ。」

「...」
「夢空、どうかした??」
「ううん。
お互い、大好きだなーって。」
「えっ!?」
「何て言うか、お互い想い合ってる感じ??
見てて伝わってくる!!」
「それは...どうも。」
「いーえ。
さて、レポート出しに行くんでしょ??」
「うん。」
「私も行くー。」
「ありがとう。」
「黄瀬くんに取られてたまるかー。」
「もう取られてるよ。」
「えー??」
「えー??」
「へへへ。行こうか。」
「うん。」

そうして私たちは教授の部屋に向かった。

「失礼します...あっ。」
「あっ。」
「あれ??奏哉じゃん。」
「夢空に由仁。」
「奏ちゃん。」

中に入ると、
奏ちゃんがいた。

「二人して、どうかしたの??」
「あっ、レポート出しに。」
「なるほどね。」
「奏哉は??」
「俺は呼ばれてたから来て、
用は済んだから今から帰るところだよ。」
「そう。」

本当は一緒に帰りたいけど
待たせるのは悪いし、
奏ちゃんだって、
この後用があるかもしれない。
なんて、ただ勇気がなくて誘えないだけ。

「奏ちゃん、気を付けてね。」
「うん。じゃあ、また。」
「ストップ奏哉!!」
「えっ??」
「5分、いや3分待ってて。」
「由仁??」
「3分??」
「夢空はシー♪
そう、3分。ちょっと待っててくれる??」
「ん、分かった。
じゃあ...食堂の入口にいる。」
「よろしくー。」

そう言って、奏ちゃんは出て行った。

「由仁??」
「まぁ、良いから。
教授、これレポートです。」
「あぁ、どうも。
君たちが入ってきてから
ずいぶんと放置されてたのだが??」
「気のせいです。」
「...そうか。」
「はい。夢空は出さないの??」
「出す!!」
「はい。確かに。」
「「お願いします。」」

無事にレポートを提出し、
奏ちゃんのいる食堂に向かった。

「由仁、奏ちゃん待たせて
...何考えてるの??」
「秘密。」
「...」
「だいたいは検討つくでしょ??」
「分かんないよ!!」
「夢空。」
「ん??」
「新入生の7割の女子が
奏哉に一目惚れしてるんだって。」
「7割も!?...去年より増えてる。」
「まぁ、その内どうせ減るだろうけど
そろそろ本気、出す頃じゃない??」
「本気??」
「私が動かないと何も出来ないは困るよ??
夢空の恋なんだから。」
「えっ??」
「私は悠夜といて、ほんとに楽しいの。
ずっと一緒にいたいって思う。
夢空にも、この幸せを奏哉と
感じてほしいの。」
「由仁。」
「大丈夫。
その辺の女子より、夢空の方が奏哉と
何倍も一緒にいるんだから。
自分を信じて頑張りな。」
「うん。」
「あっ、奏哉発見。」

由仁が手を振ると、
奏ちゃんは笑顔でこっちに来た。

「早かったね。」
「そう??」
「うん。で、俺に何か用??」
「私、これからデートなの。」
「夢空と??」
「悠夜と。」
「...自慢??」
「そう思うんだったら彼女作れ。」
「んー...」
「で、悠夜来るまで暇だから、
話し相手になってよ。」
「えー、勘弁して。」
「なんでよー。
夢空は快く承諾してくれたよ??」
「えっ??」
「由仁には逆らえないもんなー、昔から。
...あっ!!」
「えっ!?」
「...!?」

えっ、今どういう状態!?
掴まれてる手首に集中してしまう。

「あっ、奏哉!!」

私...奏ちゃんと走ってるの??

「悠夜のことだから、
由仁が呼んだらすぐ来るよ!!
夢空と俺は帰るから、
後は二人でごゆっくりどうぞー。」
「奏ちゃん!?」
「全く、恋人いない者からして
人のノロケ話とか苦痛でしかないよな!?
幼なじみだったら尚更。」

奏ちゃんは本当に嫌そうな顔してる。
後ろを向くと、由仁が満足そうに
ピースしていていた。
あぁ、まんまと引っ掛かったんだ
奏ちゃんも、私も。

「...フフフ。」
「何笑ってんだよ。」
「小学生の運動会みたいだね。」
「借り物競争的な??」
「そうそう。」
「じゃあ、ゴールは正門な。」
「絶対一等賞だよ、それ。」
「俺が夢空より先にゴールを
くぐったらジュースな。」
「なにそれ、ずるい!!」

周りの人からすれば、
変な二人組かもしれない。
それでもいい。
今だけは...どうかこのままで。

「夢空、相変わらず遅いな。
あと少しでゴールだぞ。」
「遅いも何も、
奏ちゃんに勝てるわけないでしょ!!
私、今日はブーツだし、
奏ちゃんに引っ張られてるんだから!!」
「はい、言い訳禁止ー。
じゃあ俺、ジュース確定かな??」
「絶対、嫌。
今日の所持金150円なんだから!!」
「余裕で買えるじゃん。
そんなに嫌なら、勝ってみな。」
「...やってやる!!」

私は精一杯走る。
ゴールまで、あと少し。

自分の恋がどこまで行けばゴールなんて
そんなの分からない。
でも、私は走る。

何年掛かってもいい。
もう、仲のいい“幼なじみ”からは
卒業したいから。

気付いてよ...バカ -2-

気付いてよ...バカ -2-

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-31

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