朝が来る
あの日の鼻歌が
耳の奥で鳴っていて
目が覚めた
喉が渇いて
声が出ない
しばらく目を閉じたままいたら
睡魔がもう一度をやってきて
思い出しかけている大切な記憶を
このまま忘れてしまいそうだ
朦朧とする意識の中
時間を確認するよりも早く
君の気配を探す癖
安心したい
安心したい
安心したい
心臓がそうやって波打つ
幼いころの感覚だけが呼び起こされて
手足と胸の上に錘を乗せられたような
そんな
静かな恐怖の中にいた。
ようやく我に返って
君はもうこの家には来ないのだということを思い出し、
長年の習慣にひどく悲しくなった。
青白い光が半分開いた雨戸から部屋の中に入ってきているから
夜はもうすぐ終わるだろう
そう自分に言い聞かせ安心させる
消し去りたい現実を抱えたまんま
朝が来る
朝が来る