朝が来る


あの日の鼻歌が

耳の奥で鳴っていて

目が覚めた

喉が渇いて

声が出ない


しばらく目を閉じたままいたら

睡魔がもう一度をやってきて

思い出しかけている大切な記憶を

このまま忘れてしまいそうだ


朦朧とする意識の中

時間を確認するよりも早く

君の気配を探す癖


安心したい
安心したい
安心したい



心臓がそうやって波打つ

幼いころの感覚だけが呼び起こされて

手足と胸の上に錘を乗せられたような

そんな


静かな恐怖の中にいた。



ようやく我に返って


君はもうこの家には来ないのだということを思い出し、

長年の習慣にひどく悲しくなった。

青白い光が半分開いた雨戸から部屋の中に入ってきているから

夜はもうすぐ終わるだろう

そう自分に言い聞かせ安心させる



消し去りたい現実を抱えたまんま

朝が来る

朝が来る

朝が来る

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-06-23

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