月のイルカ
昔々・・・気の遠くなる程の昔、イルカは月に住んでいました。月は水の惑星。全て水に覆われていて、イルカたちは優雅に泳いでいました。
イルカたちは二十二個の国に住み、二十二頭の王様がいて、王様はイルカたちに名前と心を与えてくれました。イルカたちは、それぞれの国で、それぞれの言葉で幸せに暮らしていました。
ある日のことです。運命の女神の悪戯でしょうか。水の惑星月は、何かの衝撃でどんどん他の惑星に吸い寄せられていきました。その惑星はすごい意志で月を引っ張りました。その惑星の軌道に月を巻き込もうとしたのでしょうか。イルカたちはみんな同じ方向を向いて、その力に耐えます。
しかし・・・。
イルカたちのがんばりは空しく、月をいっぱいに満たしていた沢山の水は、すごい勢いで溢れ出しました。そして、もう一つの惑星に洪水のように降り注ぎます。きらきらとした水たちは引っ張られるままに月を離れました。イルカたちもその力に耐えられず、水と一緒に流されてしまいました。
海のさざなみ。かもめの声。ゆったりとした太陽の光。地球の海は母なる恵みに満たされています。たっぷりの海水はゆったりと地球をかけめぐり、波とともに地球をくまなく潤します。たっぷりの塩分。それはイルカの涙の味・・・。
イルカは不思議な声を出します。
イルカは不思議な眼差しをしています。
イルカは不思議な超音波でものを感じます。
イルカたちはイルカたちの言葉があります。それは月の言葉。二十二個の国の言葉。イルカは波を切って海から空に飛び上がります。それは・・・。
それは、月に帰りたいから。もう一度月に帰りたいから、だれよりも高く、だれよりも遠くに飛び上がります。でも・・・。まだ誰も月に届いてはいないのです。
月のイルカ
イルカってスゴイ笑顔だよね♪