とある夜の独り言。

このたばこが吸い終わるまでちょっと昔話をしようか。そういって兄貴は深く煙を吐き出した。

実はこのたばこも思いれがあてな、、。あれは俺が大学入りたてのときだったかな。当時付き合ってた彼女がいてさ高校の終わりから付き合ってた。俺は大学入ったと同時にやることなくてちょっと大人になったって気がして煙草を吸い始めたんだ。それを彼女がすごく嫌って私と付き合っていたいんだったら煙草やめてと言われていたんだ。俺はわかったと言ってしばらく彼女といるときは吸わないでいたんだ。でも家帰ったり彼女と別れた後は速攻で吸ってたんだけどさ、、。

「ほぅ。」

そんなある日彼女と俺は喧嘩をした。原因はたしか記念日を忘れていたとか誕生日だったか、とにかく彼女にとっては大事な日だったその日を忘れていたんだ。レストランで食事をしたものの会話は弾まずそのまま駅に向かい帰ることになった。ホームで電車を待ってるとき彼女「もう私たち別れよう」って切り出してきた。俺はめんどくさくなって「そうだな」って言ったんだ。そしたらやけに気まずくなってどうでもよくなって煙草に火をつけた。そしたら彼女が「私なんかどうでも良かったから煙草もやめなかったんだね」って一言。俺は無視して吸ってたら歩み寄ってきて煙草とライターゴミ箱に捨てられたんだ。俺もいままでの不満とか一気にぶちまけてやりたかったけどタイミングよく電車がきてさ、俺のはもういっこ後だったからそのまま彼女は電車に乗り帰ってしまったんだよ。むしゃくしゃした俺はゴミ箱を漁ってしわくちゃになったマイルドセブンを口にくわえた。ここまでは良かった。しかし肝心なライターが見当たらず、「くっそ!」ってゴミ箱を蹴ったんだ。すると肩を叩かれて後ろ振り返ると中年のおっさんが立ってた。怒られると思ったらおっさんは何も言わずライターを差し出してきてまた肩を叩いて歩いて言ってしまったよ。あの時の煙草の味は今でも忘れられないんだ。

「で兄貴その後どうなったんだ?」

「いやこれで終わりだぞ?」

「なんか恋じゃなくて煙草に興味が湧いたよ。」

「恋なんかそんなもんさ。いいもんじゃない。煙草を恋人にしたほうがよっぽどいいぜ」

「今日は俺の恋の悩みを聞いてくれる約束だろ?」

「もうだめだ。たばこが吸い終わる。」

「ちょっと待てよ兄貴」そう言い終わる前に兄貴は煙草を消して自分の部屋に帰ってしまった。

「なんだよ」縁側に寝転がれば、真夏の夜空が広がり風鈴がカランカランと心地良い音をたて、兄の消しきれてない煙草と足元の蚊取り線香の煙がツンと鼻を刺激した。

とある夜の独り言。

とある夜の独り言。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-26

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