妖の優越
序
わたしは戦う。
なんのために?誰のために?
わたしはなぜ、ここにいるーー
ー20XX年
環境破壊、金融危機、伝染病の流行…
様々なものが人々の命をおびやかしていた。その中でも最も問題視されていたものが妖(イル)の存在だった。イルは人間の姿をしていながら、人間として生きることをやめた人の果てであった。イルはどんどん普通の人間をも巻き込んでいった。このままでは、人類が滅んでしまう、そう考えた政府は特殊機関を秘密裏に設けた。その名も"フィアルライヤ"。才能のある一部の者だけがフィアルライヤに選ばれた。
「おい、ほんとにあいつであってるのかよ。」
「えぇ、あってるはずよ。」
「…。」
夕暮れ時の太陽が、三人の影を照らした。
「ミュウ早くっ!授業はじまっちゃうよ!」
「ごめんごめん、今行く!」
次の授業は土星生物の時間だった。
「えー、生徒の皆さん。直ちに教室へ戻りなさい。もう一度繰り返す…。」
「えっなにこの放送…⁇」
「わかんない…。とりあえず教室へ戻ろう。」
教室へ行くともう先生が居り、私達が最後のようだった。
「えっと、さっきの放送の事だが…
実はこの学校にイルが現れた。」
「えっ…」
案の定教室はパニックになった。
「落ち着け!とりあえずまだ被害はでていない。今から速やかに下校しなさい。」
その瞬間、パリーンと窓ガラスが割れる音がした。
えっなに⁇
…イルだ。生気のない目。物の判断がつかなくなっている。
教室は再びパニックに包まれた。
みんなが一斉に教室から出て行った。わたしも逃げようとした。が、一体だと思っていたイルが二体いて、はさまれてしまった。
え、もうわたしダメかも…。
「おい、お前変幻使えるんだろ!
使わなねぇと殺されるぞ!」
誰⁈変幻ってなに⁈わかんない…
「あぁ、もうくそっ!変幻‼」
恐る恐る顔をあげると、わたしの目の前に青年が立っていた。
ん?猫耳⁇生えてる…
青年は鋭い爪を見せ、イルに向かって突進した。イルも負けじと前へでてきた。青年は、待ち構えていたように爪で切り裂いた。瞬間、イルは青年のペンダントのなかへ光となり吸い込まれていった。
一体なんだったの…。あまりに突然の出来事で戸惑いが隠せない。周りはもう、わたしを犠牲にしたらしく、誰もいなかった。
「おい、お前立てるか?」
「はっはい…。あの、さっきは助けてくれてっ」
「お前がミュウだな?」
「なんでわたしの名前…」
「…俺についてこい。」
わたしは少し戸惑ったが、怪しい人ではなさそうなのでついていく事にした。
後で考えたらそこがわたしの人生の分かれ道であった。
彼についていくと一台の車が止まっていた。
「乗れ。」
「えっ、でもわたし…」
その時バラの香りがした。
きつい、だけどなんか好きかも…。
「よし、眠ったわね。」
「お前はいつも手段が荒いんだ。気をつけろよ。」
「人聞きの悪い‼別に命には関わらないんだからいいでしょ。」
「遊んでいる時間はない。はやく本部へ戻るぞ。」
「「ラジャ。」」
「ん…。ここ、どこ…⁇」
そこは見たことない部屋だった。イスは革張り、絨毯はフカフカ、あれは…シャンデリア⁈なにここ…。
「あら、目が覚めたかしら?」
「あなたは…?」
「わたしはシャナ。よろしくね、ミュウちゃん。」
…なんでわたしの名前知ってるの。不安が募る。
「大丈夫よ。あなたに危害を加えるつもりはさらさらないわ。ちょっとついてきてくれる?」
「主任、No.36980842を連れてまいりました。」
シャナに連れていかれた部屋はさっきの部屋よりも大きく、もっと高級そうだった。
「おう。連れてきたか。わたしの名前はネビル、妖特殊防衛隊主任だ。」
「あの、わたしはっ…。」
「あぁ、君の名前は知っている。天津ミュウだろう。」
えっなんでみんなわたしの名前を知っているの?
なぜわたしはここにいるの?
妖の優越