私自身の物語。

私と小説


私は昔から、本が好きだった。


幼稚園の頃、遊び回る友達をよそに、一人本に熱中していた。


小学生になり、休みの日はフラリと図書館や書店に足を運ぶようになった。


中学生になった今、自分でも物語を書きたくなった。


初めて書いたのは中学に上がった始めの年。なんとなく、今しかないような気がして始めた。


殺人鬼の話だっけ。漆黒の闇が支配する、ドロドロな世界。


人間同士が嫌い合い傷つけあう、この世界を誇張したもの。


真実から目を背けすぎたために与えられた罰。


人を疑いすぎたために犯した罪。


話自体はなんにも面白くないし、読者には伝わるものも糞もない。


そんな物語。

理想と現実

その物語から、私の夢は始まった。


小説家になりたいという、大きすぎる夢。


そして、掴むことなどできない理想。


どれだけ手を伸ばしても才能など手に入らず、ソレは遠のく。私を嘲笑うように。


私はそれでも手を伸ばす。背伸びをし、必死に。


そして、道を踏み外した。高い目標になんか届く訳もなくて思いっ切り落ちていった。

要するに、スランプってやつだった。


急に書くスピードも衰え、ストーリーに簡単な矛盾がいくつも生まれるようになっていった。


書き始めたときのほうがまだ上手だった気がする。

書き始めた当初は一文一文見直しながら物語を進めるのが私の書き方で、今はかなり勢いのまま書く。

緊張感的なものが欠けたからこうなったのだろうか。


小さく独りごちて数枚の原稿用紙を雑にまとめた。

評価と感想


原稿用紙を手に立ち上がると、急に吹いた強い風に手の中から数枚が飛んでいく。


あーあ、めんどくさい。

ぱたぱたと小走りで紙を追いかけて掴む。

必死に集めてこれで全部かな、なんて思った矢先また一枚風にさらわれていった。


「嘘でしょ……」

窓の外にひらひらと飛んで行くそれを見つめながら、小さく息を吐いた。


失った物語はもう二度と戻ることはない。

同じ話を脳内で思い描くなんてできない。

それでも、そこまで惜しいとは思わなかった。

どうせ自分の書く話だし誰に見せるわけでもないのだから。

ただの自己満足なんだからそこまでこだわる必要がない、そう思った。

私自身の物語。

私自身の物語。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-23

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