世界と魔法と友情と
~第一話 予感~
何でオレがこんな事を・・・
ため息混じりに深呼吸をし、昨日のことを思い出す。
昨日はいい天気で、オレは授業をサボって屋上で昼寝をしていた。
はずだった。
どうやら便所に行きたくなったらしく(寝ぼけて覚えていない)フラフラとトイレに向かう途中に教師と遭遇、そこから意識が覚醒、全力で逃走するが努力むなしく捕獲されよりによってトイレ掃除を命じられてしまった。
「不幸だ・・・」
またため息をつきつつ掃除を再開する、逃げたいが後ろからガッツリ監視されているので不可能である。(すでに実行済み)
オレが逃走方法を考えているあいだに昼休みは終わってしまった。
『神崎 海牙』これがオレの名前であり不真面目な生徒リストのトップランカーでもある。
二日連続でトイレ掃除を喰らう気にもならなかったので、教室に戻ると後ろから声がしてきた。
「おつかれ~(笑)」
「いやー、災難だったねー」
なんとも他人事感まるだしで声をかけてきた二人に言い返す。
「うっせー!おまえらだってこないだ野球やってなぜか二枚もガラスわったやつで喰らっただろーが!」
うっ、とゆう顔をしているこの二人は相葉陽太・姫島麗子、オレと同じ『不真面目な生徒』である。
陽太はオレと同じくらい(165~170)の身長で簡単に言えばバカだ、目がほとんど真っ茶色なのが特徴(本人談)
姫島は・・・まあ名前のとおり女子だ。陽太と違って不真面目なのはバカだからではなくその逆、頭が良いためやる気が出ないらしい。
なんとも羨ましいがしかたない。これが現実だ。
「ったく、何でオレ達こんな学校にいるんだろうな」
オレ達の通う学校、『魔法学校』。一応言っておくと異世界などではなく日本にある。
この学校にいる生徒はみんな中学卒業後、政府から送られてきた指令書によってこの学校に通うことを余儀なくされている。
表向きは一般の学校なので普通の授業もある(オレがサボっているのは主にそれ)が、メインの授業は『魔法』だ。
魔法がどんなものかは今はめんどくさいので説明しない、ただ結構危険なため学校外では使用禁止だということは説明しておこう。
「『君たち魔法を使える者を管理、育成するため』って校長が言ってたじゃない」
姫島はすばやく答えてくれたが、オレはなんだか納得がいかなかった。
「本当にそれだけか?なんかひっかかるんだよな~」
「まあなんでもいんじゃね?」
楽観的な陽太の意見でオレの思考は停止し、終了した。
「そうだな」
そのあとはとりあえず授業を受け、家に帰った。
「ただいま~、って誰もいないんだったな」
オレは家が学校から遠いから、今は一人暮らしだ・・・一軒家に。
なにを思ったのか両親がこの家をオレに買ってしまったので、住まないわけにはいかなかった。
もう三ヶ月も住んでいるがこの広さはいまだに慣れない。
とりあえずメシの仕度をしようと、リビングに荷物をおいてキッチンに向かおうとした時。
「・・・おまえなのか・・・」
背筋が凍るほど、人とは思えない生気の無い声が聞こえた。
瞬間的に振り返るが、誰もいない・・・
「なんだ、今の声は」
その後はなにもおきなかったが、あの声は気のせいとおもえなかった。
なにかが、始まる気がした。
~第二話 選択~
「海牙!おまえの番だぞ」
ボーっとしていたオレに陽太が声をかけてくれた。
「よし海牙、一番得意な魔法をつかってみろ」
そう、いまは魔法授業中だ。
魔法とは、オレ達がイメージしたものを現実化(リアリティング)すること。
つまり手から炎がでるイメージをすれば、本当に炎がでる。ほとんど超能力だが『魔法』らしい。
もちろん個人差もある、人によって現実化できるものが違う。簡単に言えば炎を出せる人と出せない人がいるってことだ。
「ハイハイ」
オレはいまのところリアリティングできないものは無いが、
得意なのは武器具現化(召喚魔法の一種)と属性魔法(炎・雷・水・風など)だ。
どっちにしようか迷って、どっちもやってみることにした。
「よっと!」
]
まず剣を現実化、ほぼ同時に剣から炎がでるイメージを・・・
ボン!!という爆発音と同時に刀身から炎が出る剣がオレの手に握られた。
「『マジックブレード』ってところか」
おおー、と周りから賞賛の声があがる。
ふと教師を見ると妙な顔をしていた、引きつった笑いと見開いた目、この表情は『恐怖』?
「どうしたんすか?先生」
オレの言葉に気づかず教師はブツブツと独り言を始めた。
「まさかこんなに早く合成魔法を使える者が出るとは、プロジェクトを開始するか?いやまだだ
しかしもうこいつらに真実を教えてもいいか」
プロジェクト?真実?なんのことだ。
わけがわからなかったが、この後話されたことはオレ達にとって認めたくない、残酷な事実だった。
授業後、魔法学校にいる全ての生徒が集められた。そして校長が出てきて『真実』を語り始めた。
「君たちに親はいない」
そんなことをいきなり言われても、理解できなかった。
「
そもそもこの世界の人間ではないんだ、
16年前きみたちは赤ん坊の姿で地球のあちこちに出現した。
我々は君たちを『天の落とし子』と名づけ、
一般の家庭で中学卒業まで育ててもらうことにしたんだ」
この世界の人間じゃない!?そんなこと、あるわけが・・・
「ありえないと思っているだろう、だが君たちの魔法がその証拠だ!普通の人間がこんな力を使えるわけ無いだろう!」
なにも言い返せなかった。それは同時に自分がこの世界の人間じゃないと認めたようなものだ。
もう周りは大パニックだった、皆「嘘だ!」「信じるか!」と騒いでいる。
オレはそれすらできなかった、初めて自分の弱さを知った。ただ怖くて、わけがわからなくて震えていた。
「君たちに選択してほしい。ここに残り、魔法を極めていくか、ここを去り、魔法を使わないと誓い一般社会で生活するか。期限は明日までだ」
世界と魔法と友情と