爽快スカイ
快晴、世はコトモナシ!
蒼子は車を走らせた。このままどんどん先まで行くのだ。目的地はない。でも、待っている。いつまでも待たせては悪いではないか!
流れる景色に高揚した気分を抑えきれず、アクセルを踏み込んだ。そのまま一気に高速道路に駆け上がる。紅白の停止バーが爆発したが、気にしない。あれは、そういうものなのだ。
お気に入りの鼻唄が音もなく流れる。アクセルは限界を突破した。高騰したフルマンタンのガソリンを贅沢に。
蒼子は前を見た。道が二つに別れている。綺麗なY字。迷わず右を選択する。右の道は急カーブで旋回して天空へ。気づいたときにはもう遅い。シルバーの普通車が大空に飛び出し、中の人は蒼と化した。
「……さん?…………さん!」
鼻声が名前を呼ぶ。
「はい」
無表情が小声で返事、笑みを貼り付けた。
……は、新入社員一年目だ。不慣れながら、希望の部署に配属され、がむしゃらに仕事をしてきた。
この一年、色々なことがあったものだ。度重なる残業、休日は無給の研修。慣れない体育会系の先輩に朝まで振り回されたり、お局様にお愛想。
「言いにくいけど、あなた、春から異動ね。レポートの提出も遅いし、悪く思わないで。大丈夫?」
「……はい。」
大丈夫と聞かれたら、大丈夫と答えなければならない。
それがこの国のルールだ。
爽快スカイ