彼女とは、
書きかけです。徐々に付け足していきます。それでもよろしければ。
4月24日追加しました。
1
生と死は等価なのだろうか。生があるから死があるのか、それとも死があるから生があるのか。どちらが先かは人にもよるだろう。しかしいずれにしても生き物である限り生と死に縛られる。ならばその概念に縛られない存在は。
2
「私ね、大学は絶対に東京へ行くわ!」
セーラー服に身を包んだ少女から女性へ花開こうとしている、大人とも子供とも言い難い過渡期を迎えた二人の存在。現在高校三年生の二人が駅の待合室で電車が来るのを待っていた。
「それは由衣が東京の大学を受験したことからも分かるけれど、今さら何?」
背中までまっすぐ延びた漆黒の髪、髪とは対照的に雪のように真っ白な肌、クールな話し方をする彼女は文庫本に目を落としたまま由衣と呼んだ彼女の話を聞いている。
「だって早くここから出て都会に行きたいんだもの!」
クセのある焦げ茶の髪を二つに結び、話し相手が本を読んでいることに気分を害した様子もなく語気を荒げて由衣は言った。
「考えてもみてよ。電車は一時間に一本あるかないか、コンビニもない、スーパーすら車で一時間かかる、こんなドが付くほどの田舎から出て行きたいと思うのは当たり前でしょ!?なのにあんたは…」
「そんなに東京の大学を受けなかった事が意外?」
由衣の攻めるような口調をものともせず、文字を追いながら言う。
「当然よ!みーんな東京に行くのにあんただけ行かないなんて。先生もあんなに説得してたじゃない」
「遠回しの説得なら聞かないわよ。散々言われたことだし、意見を変えるつもりなんてないからやるだけ無駄よ」
ページをめくる。
「分かってるわよ、あんたが頑固なことくらい。でもやっぱり勿体無いじゃない」
ページをめくる。
「あんなに成績も良いし、東大だって余裕だろうって言われて」
ページをめくる。
「なのに大学を」
パタン。
本を閉じた音が殊更待合室に大きく響く。
「その話はおしまい。そろそろ電車が来るわ」
本をしまいながらそう声をかける。もう話は終わったとばかりに、まだ言い足りなそうな由衣を置いて先に待合室を出る。彼女はクールというよりもマイペースと言った方が正確だったようだ。
「ちょっと待ってよ!もう…まだ話は終わってないのに」
鞄を背負いなおした由衣も少し小走りになりながら追いかけてくる。
まだ寒さの残る2月。あと少しで彼女たちは卒業を迎え、それぞれの進路を迎える。
3
私が彼女と出会ったのは高校二年になる春だった。
今でもその日のことは鮮明に思い出せる。私が住んでいるところは田舎の中でもド田舎と10人いたら10人が口を揃えて答えるような辺鄙なところだ。町というよりも村といった方がいいかもしれない。住んでいる人はお年寄りが多くて、子供は少ないから1学年にいるのは片手で数えられるくらい。中学校はかろうじてあるけれど、高校はこの町にはない。だから私を含めてここに住んでいる高校生は電車で片道1時間かけて通うのだ。その高校がある町も私の住んでいる町に比べたら栄えているとは言えるけれど、都会には程遠い。そんな場所に転校生。注目を集めないはずはなかった。
転校生というだけでも注目の的なのに、彼女はたった一人でこの町に移り住んできた。こんな田舎では噂が広がるのも早い。それは町で彼女の話を聞かない日はないほどに。
彼女はとてもきれいだった。
田舎が嫌で羨望の的である東京のような、都会のたくさんの人間の前でさえ彼女の美貌は際立つのだろう。実際に彼女が都会にいる姿を見てすらいないから想像でしかないけれど。
ここにいる彼女は浮いて見えた。異質とか別次元とかそんな言葉が合っているのかもしれない。ここに住んでいる人は少なからず感じたり、思ったりしている。口には出さないけれど、みんなの雰囲気がそう言ってるようだった。
これほどまでに噂の的になっているのに、彼女はどこ吹く風で。噂など気にも留めていないようだった。
彼女とは、