相合傘

「雨宿りですか?」
男は女に尋ねた。

「いいえ、待ってるんです。」
女は答えた。
「若い頃、よくここで
好きな人を待っていました。」

日も暮れた薄暗い駅に
雨音と女の声が鳴る。

「雨の日だけね。」
女は頬を赤らめた。

「なぜ雨の日なのですか?」
男は尋ねた。

「私が傘を持っていなければ、
彼と相合い傘できるでしょう?」

男は微笑みながら言った。
「なるほど、女性は頭が良い。
僕も若い頃、よくこの駅から
好きな人と帰りました。
雨の日に相合い傘で。」

「その子と今は?」

「僕が引っ越してから会っていません。
久々にこの駅を訪ねたのですが、」

男は傘を開いた。

「傘、ないなら入りませんか?」

女は微笑んだ。

「えぇ。」


雨が懐かしい音を奏でていた。

相合傘

お互いがお互いに気づいているのに、
例のごとく相合傘をして帰るという十数年後のお話。

いいですねー相合傘。
レトロな恋愛。

相合傘

お題「雨宿り」 the interviews 「300字小説」より。 素敵なお題ありがとうございました。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-20

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