田舎の帰り道
「街灯がなくても
こんなに明るいんだ。」
「まあ、田舎だけんね。」
クスッと笑う。
日が暮れた後も
月明かりが二人の影を作り、
それを喜ぶように
鈴虫たちが大合唱している。
「東京ってやっぱ
よかとこと?」
「いや、俺のいた所は
空気も悪けりゃ夜もうるさいし、
全然いい所じゃない。」
「そうつたい…。」
彼女はふーんと俯いた。
「俺からしたら、
こっちの方がいいや。」
声が響く。
「恐ろしい程の静けさも、
この上ない不便さも、
あるからこそ
君と二人の時間がうまれてるって
思うから、さ。」
言った後で少し
クサすぎたかな、と思ったが、
まさかこの先二十年間も
この日のことを、
食卓でからかわれることになるとは、
当時の僕は思いもしなかった。
田舎の帰り道
よくある話ですね。すいません。