正義と悪

まだ新米だった僕には
衝撃的な事件だった。

大量の児童誘拐・監禁で
警察に終われていた男の
立て籠り事件だ。

事件発生から74時間以上が
経っていたので
最終的に犯人射殺で
解決するに至った。

やむを得ない判断だったのだ。


しかし犯人射殺後、
中にいた子どもたちの目は
恐怖というよりも
怒りや悲しみに染まっていた。

そして言うんだ、

「なんで殺したの?」

と。


彼らは皆傷だらけであったが、
検査の結果、それは
この誘拐以前のものであった。
健康状態も良好で、
精神的外傷も見られなかった。

そして皆が皆、
口を揃えて
帰りたくないと言った。


「何が正義で
何が悪なのか、

大人になったらわかるの?」


そう言われた瞬間、
僕の中で何かが崩れた。

ただ泣いた。

正義と悪

いいこととわるいことの基準ってすごく不明確だと思うんですよね。

例えば、小学生の男の子が万引きをして、
その理由を聞いたら、両親が行方不明で幼い妹に何か食べさせないと
死んでしまう、ということだったとしましょう。

万引きはいけないことです。でも誰かの命を守ることはいいことです。

うーん、難しい。難しいです、人間って。

正義と悪

お題「正義と悪」 the interviews 「300字小説」より。 素敵なお題ありがとうございました。

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-20

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