ある少年の夏休み

夏休みの図書館開放を利用して
勉強をする学生は少なくなかった。
しかし、ここの図書館は
幽霊が出るだのなんだの
都合のいい噂がたってくれたお陰で、
毎日僕の他はほとんど来館せず
静かに勉強できた。
館長ともすっかり顔見知りになった。

「君は自転車で毎日来ているだろ。
事故には気を付けなきゃいけないよ。」
館長が突然言うので
僕は不思議そうな顔をした。

「近くで高校生の事故があったからね。
その子も君のように勉強を
頑張ってたそうだが、他界したんだと。」

「そうなんですか。
その子、可哀想ですね。」

「あぁ、努力が報われないなんてなあ。」

館長は辛そうに笑った。


大きな天窓から差し込む夏の日差しは、
僕をすり抜け、彼の影を濃く作った。

ある少年の夏休み

珍しくホラー風味。
夏なのでたまにはこういうのもいいかなって思って。

ある少年の夏休み

お題「夏休み」 the interviews 「300字小説」より。 素敵なお題ありがとうございました。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-20

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted