海と思い出
「うわあ、懐かしい!」
思わず声がこぼれた。
「変わってねぇな、全然。」
ありきたりな海の家。
決して綺麗とは言えないが、
青い海に似つかわしい海の家。
私たちの思い出の海の家。
「亜美も来れたら良かったのに。」
「しゃーねぇよ、
今じゃ亜美もお母さんだしな。」
かき氷を注文して、颯人は切なく笑った。
私たちも大人になったんだ。
認めたくない事実である。
「…あと一回くらい
皆で海来れるかなあ。」
どうだろうと言いかけて、
慶は窓から海を見つめた。
「この景色は変わらないのにな。」
海の青と空の青が混じり合う。
私たちが砂浜につけた
いくつもの足跡は波が拐い、
私たちの青春は
海風が奪っていった。
またひとつ、夏が過ぎ行こうとしている。
海と思い出
夏は青春の代名詞だと勝手に思って書きました。
夏が過ぎるととても寂しくなります。
それは、日が暮れるような感覚で、私は夏が嫌いです。