海と思い出

「うわあ、懐かしい!」
思わず声がこぼれた。
「変わってねぇな、全然。」

ありきたりな海の家。
決して綺麗とは言えないが、
青い海に似つかわしい海の家。
私たちの思い出の海の家。

「亜美も来れたら良かったのに。」
「しゃーねぇよ、
今じゃ亜美もお母さんだしな。」
かき氷を注文して、颯人は切なく笑った。
私たちも大人になったんだ。
認めたくない事実である。

「…あと一回くらい
皆で海来れるかなあ。」
どうだろうと言いかけて、
慶は窓から海を見つめた。

「この景色は変わらないのにな。」


海の青と空の青が混じり合う。
私たちが砂浜につけた
いくつもの足跡は波が拐い、
私たちの青春は
海風が奪っていった。

またひとつ、夏が過ぎ行こうとしている。

海と思い出

夏は青春の代名詞だと勝手に思って書きました。
夏が過ぎるととても寂しくなります。
それは、日が暮れるような感覚で、私は夏が嫌いです。

海と思い出

お題「海の家」 the interviews 「300字小説」より。 素敵なお題ありがとうございました。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-20

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