花火

大きな音が心臓に響く。
沸き上がる歓声。
真っ黒な夜空を彩る大輪。

彼女の目にその光は映らない。


「次は赤いのだ。あ、ハート型も!」
彼女は微笑んで僕の声を聞いている。

周りには浴衣を着た男女が寄り添い、
幸せそうに夜空を眺めている。
幸せなはずなのに、
僕は涙が込み上げてしょうがない。

「…泣いてるの?」
あぁ、どうして彼女はわかるのか。

僕の姿は見えていないのに。

「一緒に見たかったんだ。
こんなに綺麗な花火。」

彼女は優しく僕の頬に触れた。

「見えてるよ。」

彼女は少し笑って見せた。

「言ってくれたでしょ?
私の目になるって。
あなたの目に映った花火は、
ちゃんと私にも見えてるよ。」


涙に滲んだ花火は
どうしようもなく美しかった。

花火

盲目の彼女のお話。

私の高校の隣には盲学校があるのですが、
そのような障害を持っている人ほど優しいのは
ほんとになんでなんでしょう。

花火

お題「花火」 the interviews 「300字小説」より。 素敵なお題ありがとうございました。

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更新日
登録日
2013-03-20

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