花火
大きな音が心臓に響く。
沸き上がる歓声。
真っ黒な夜空を彩る大輪。
彼女の目にその光は映らない。
「次は赤いのだ。あ、ハート型も!」
彼女は微笑んで僕の声を聞いている。
周りには浴衣を着た男女が寄り添い、
幸せそうに夜空を眺めている。
幸せなはずなのに、
僕は涙が込み上げてしょうがない。
「…泣いてるの?」
あぁ、どうして彼女はわかるのか。
僕の姿は見えていないのに。
「一緒に見たかったんだ。
こんなに綺麗な花火。」
彼女は優しく僕の頬に触れた。
「見えてるよ。」
彼女は少し笑って見せた。
「言ってくれたでしょ?
私の目になるって。
あなたの目に映った花火は、
ちゃんと私にも見えてるよ。」
涙に滲んだ花火は
どうしようもなく美しかった。
花火
盲目の彼女のお話。
私の高校の隣には盲学校があるのですが、
そのような障害を持っている人ほど優しいのは
ほんとになんでなんでしょう。