移り変わる景色と共に
この時間は
アスファルトの熱気もほとんどなく、
冷たい空気の中
ただ左手の温もりだけを感じていた。
「秋だな。」
拓は少し寂しそうに見えた。
夏が過ぎたからではなく、
きっと秋が来たからだ。
「拓は横浜、受かりそう?」
「んー五分五分。」
五分五分かあ…。
大学が離れるとなると、
きっと拓は私に別れを告げる。
拓の夢を応援したい気持ちと、
離れたくない気持ちで言葉に詰まる。
でもきっと拓も同じ思いで、辛くて、
どうしたらいいのかわからないんだ。
だから、私がしっかりしないと。
「実りの秋だよ、」
少し上を向く。
「努力が実る秋だよ。拓は絶対受かる。」
精一杯の笑顔で言った。
拓はありがとうと言って私の頭を撫でた。
私達は、もうすぐ枯れる。
移り変わる景色と共に
学生にとって、進学による別れはつきものです。
応援したいのに、離れたくなくて、
なんだか複雑な気持ちになります。
まあ、距離なんて、気持ち次第じゃどうにでもなるものだと思いますけどね。