誕生日

 あのさぁ、頼むからいい加減にしてくれよ。今日、俺の誕生日だって知ってんだろ。今更、忘れたなんて言わせないぜ。なのに、何で来ないんだ、どういうつもりだよ。俺は朝から待ってたんだぜ。なのに、もうすぐ午前零時。俺の誕生日終わっちゃうんだよ。
 去年は、この部屋で楽しく二人で過ごしたよな。あの時も確かサプライズだったよな。当日まで何にも言わないから、まさか忘れてるのかと思ったら、夕方になって突然お前来てさぁ、シャンパン開けてお面かぶって、お前本当にバカな。いきなり抱きつくもんだから、ケーキ落としてグチャグチャだったじゃん。まぁ、味は変わんねえからいいんだけどよ。
 まさか、ここまでじらせて、誕生日ラスト一分とかで来るつもりじゃねえだろうな! 去年と同じじゃ、サプライズになんねえもんな。でも、もうすぐ一分前だぜ。そろそろ出てこないと、さすがにまずいんじゃないか。

 半年前のお前の誕生日だって、祝ってやったじゃないか。飯だって高級なイタリアンおごってやったし、プレゼントに無理してダイヤの指輪かってやっただろ。ちっちゃいダイヤだったけどさぁ。あれ? お前、気に入ってたよなぁ? 喜んでたよな? だって、泣いてたもんなぁ。誕生日と婚約指輪一緒にしたのがいけなかったか? そのほうが誕生日のプレゼント代一回分浮くとか、まぁ、確かに考えたけどさぁ。ばれてたか? それで怒ってるのか? 今更か?
 おい、おい。もう一分切っちゃたよ。洒落になんないぜ。

 バーカ。誕生日過ぎちゃったじゃねえか! ふざけんなよ。何で出てこねぇんだよ!
 朝になったら、文句言いに行くから覚悟しておけよ! お前、いっつもそうじゃなえか。いい加減で、約束破るし、すぐ遅刻するし。お前の誕生日の三日後に待ち合わせした時だって、どうせ寝坊したんだろ。そりゃぁ、遅刻してきたら嫌味の一つくらいは言うよ。そりゃぁ嫌味ぐらいは言うけどさぁ、だからって無理しなくて良かったんだよ! だいたい子供じゃねえんだから、信号くらい守れよ! 赤で飛び出すなんて、幼稚園のガキだってしねぇよ。

 前の時に持っていったシュークリームな、あれ有名なナカニシのだよ。並んだんだよ。この俺がだよ。だけど怒られちゃったからもう持っていけないんだ。お前、甘いもんが好きだから、今日は缶入りのおしるこで我慢な。花はお前が好きだった、白いユリを持っていくからさ。シュークリームは、蟻はたかるし、雨に濡れるとドロドロになって、掃除が大変なんだって。

誕生日

ちょっと切ない話をと思い書きました。

誕生日

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-06-17

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