ローカル線の車窓から

空気が綺麗だの、
自然が多いだの言うが、
得なことなんてありゃしない。

そう思いながら
ローカル線に揺すられていた。

前には白い杖を持った
一人の男性が座っていた。


ローカル線と言っても、
なんせ阿蘇であるから、
観光客は多く、
途中で景観を楽しむ停車は
私を飽々させる。

若い乗務員は例の如く
決まり文句を言って
観光客を外に出した。

しかし、白い杖の男性は動かなかった。

まあ、当たり前だよな。

すると、乗務員は彼に優しく声をかけた。


「一緒に見に行きませんか?」


そうして彼に肩をかし、
ゆっくり外に出て、
阿蘇の絶景を前に彼女は言った。

「綺麗でしょう。」

彼は答えた。

「えぇ、とても。」


車窓から見たその景色の美しさは
語れたもんじゃない。

ローカル線の車窓から

私の高校時代の先生がしてくださった話を基に書きました。
私が乗務員なら、こんなことはできないです。
でも、目が見えない方にとって、このように接してもらうのは
とても嬉しかったのではないかなと思います。
こんな素敵な人がいる地元をとても好きになりました。

ローカル線の車窓から

お題「ローカル線の車窓から」 the interviews 「300字小説」より。 素敵なお題ありがとうございました。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-20

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