誕生日
内輪ネタ第二弾。内輪ネタ。
二人がとにかくベタベタするお話。
人目はきっと気にしていない。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
雛倉綾女の場合
三月二十日 春分の日 某駅改札付近
やっべもう着いてるかなぁ……
俺、雛倉綾女は昨日購入した服を着て、小走りで待ち合わせ場所に向かった。
慣れないスカートでいつもの様に走ることが出来ない。
相手の姿を見つけ、あと少しだと歩き始めると……こけた。
さすがにスカートがめくれることは無かったが、恥ずかしいことこの上ない。
相手は俺に気付き、苦笑しながら近づいてくる。
「大丈夫?」
手を差し出されたが、俺はそれを振り払い立ち上がる。
「子供扱いすんな」
「はいはい、いやー、さすが新山と千代さん。本当に可愛くなって戻ってきた」
相手、俺の彼氏である橋谷海斗は感心したようにうなずいて、俺の頭を撫でながら言った。
「……っとに、なんでおまえはそういう事をさらっと言えんだよ」
恥ずかしくなって相手の手をどけ、そっぽを向く。
「本当の事だからな。ほら、こっち向く」
そう言って相手はニコッと笑って視線を合わせてくる。
「……バカ」
「はいはい、さて、行きたいところのご希望は?」
「無い……かな」
「それじゃエスコートさせて頂きますね、姫?」
「もう、勝手にしろ」
「素直じゃないのー」
相手はクスクスと笑い、歩き始める。
その後、俺は小さなケーキカフェに行き、本屋さんに寄って、
ウィンドウショッピングをした。結局いつも通りのデートだった。
それはそれで楽しかったし、いつもと違ったのは服ぐらい。
「海斗、今日はありがとな」
別れ際、俺はニコッと笑って言う。
「まだ俺プレゼント渡して無いのにそれ言う?」
相手は少し苦笑して鞄の中から二つの包みを出す。
「はい、まずこれね」
相手は俺に少し大きめの袋を渡す。
「開けていいのか?」
「どうぞ」
俺はリボンをほどき、中を見る。
「テディ・ベア……?」
それは首にリボンを巻かれ、ちょこんと座ったくまのぬいぐるみだった。
「そ、足に誕生日書いてあるやつよく売ってるでしょ、あれ」
「お店にあるのよりデカくね?」
「たまたまデカいやつ見つけただけだよ」
「高くなかったか?」
「んな事気にしなくて良いんです」
ポンポンと頭を撫でる。
「ん、ありがと」
「で、もう一個がこれね」
そう言って渡されたのは少し小さな箱で、開けると綺麗なネックレスが入っていた。
「ちょ、海斗、これ、どういう事?」
俺には不釣り合いなその代物に驚きを隠せなかった。
「今日の服見て渡したくなった」
「だって、これ、お姉さんにって買ってたやつだろ!」
「嘘。姉貴にこんなの渡すかっつの」
「でも、悪いって!」
テディ・ベアまで貰ったんだ。これ以上貰うのは気が引ける。
「気に入らなかった?」
「それは無い!」
「なら貰って」
そう言うと彼は俺の首にそれをつけてくれた。
「うん、やっぱり似合う」
「ありがと、本当に」
「いえいえ、姫に気に入って頂けたら光栄です」
そう言って彼は私の手の甲に小さく口付けをした。
頬が夕暮れの色に染まった、そんな誕生日
Fin......
誕生日
何があったんだろう、彼に。そして私に。
彼のベッタベタ感半端じゃない。
多分そのうち恥ずかしさと後悔によって消される。
お疲れ様でした。