びゅーてぃふる ふぁいたー(6)

死Ⅱ

うあああああおおお。
 断末魔の声が聞えた。さっきの大男か。いや、ゲームは終わったはずだ。それなら、何故、あたしは気がついたのだ。また、ゲームが始まるのか。いあや。周りは真っ暗だ。電源が入った様子はない。画面の外を見る。誰かがいる。いや、誰かが倒れている。誰だ?新しいゲーマーか?いや、部屋の中じゃない。外だ。道路か?いや、駐車場だ。車が止まっている。その下に何かがある、何かがいる。人間だ。いや、人間の姿をしている。何故、寝そべっているのだ。車のパンクの修理か。あたしは、何故、こんな光景が見られるのだ。いや、目で見ているのかどうかわからない。あたしの頭の中に光景が浮かんでいるのだ。
 何故だか、風景がパンされ、男の姿が拡大していく。アップしていく。先ほどまで遠目だったが、今は、全身の姿が映し出され、上半身、頭と拡大された。男は車を修理しているんじゃない。首の上に車のタイヤが乗っている。目の玉が飛び出し、舌も口から飛び出し、鼻かも耳からも体液が流れ出している。
 男は死んでいる。何故、あたしの眼にこの光景が写るんだ。この男の正体は誰だ?もしかしたら、あのゲーマー?はっきりとはわからない。あたしが大男と戦っている時に、ちらっと眼に映っただけのことだから、確証はできない。
 ただ、言えることは、このゲームのマザーが、意図的に、あたしにこの男、ゲーマーの死の姿を見せていることだ。これはあたしに対する警告なのか。マザーを裏切れば、こうなる姿、死を見せつけているのか。
 だが、あたしはマザーに告げる。あたしが負ければあたしは死。あたしが勝てばあたしを操作したゲーマーが死。どちらにせよ、生と死からは切り離されない。ゲームの登場人物であるあたしが生・死を考えるのも変な話だ。
 ああ、消えていく。あたしの眼、あたしの網膜から男が、男の死体が消えていく。暗い、真っ暗だ。そう、あたしの、あたしの意識も消えていく。あたしは、生きているんじゃなくて、マザーにもてあそばされているだけなのか・・・。

びゅーてぃふる ふぁいたー(6)

びゅーてぃふる ふぁいたー(6)

死Ⅱ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-20

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