とびらの前に
『とびらの前に』プロローグ:出会い
一般的な高校生である城崎信也。
朝、玄関のとびらを開けると、そこには一人の少女が!!
その不可解な出会いから始まる物語。
5月11日。月曜日。午前6時23分。
目の前に、1人の少女がいた。
「・・・・・・」
無言で扉を閉める。
あってほしくはないのだが、もし、俺の目が正常であり、寝ぼけていないのであれば、確かに玄関の前に1人の少女が座っているのを見た。
再び扉を少し開け、確かめる。数秒後、まばたきを数回はさみ、閉めた。
・・・・・・うん、やっぱり―――いました。
ドアの横の壁に背中を付け、膝を抱えて眠っているかのようにコクリコクリと船をこいでいる1人の少女が。
・・・・・・よし、ひとまず落ち着いて現状を把握しようではないか。
今日は5月11日、月曜日。1週間のうちでもっともだるく、きつい日だ。俺の名前は城崎信也。何とも珍しい12月31日生まれ。高校2年生。
両親は海外赴任中で家にはいない。おぼろげだが、昔、俺も一緒に海外に付いていったことがあったが、病弱だった俺はその生活で体調を崩し、家政婦を雇って1人日本に帰っていた。3歳の頃だ。
その時には、1人1つ年下の妹がいた記憶があるが、顔は思い出せない。ということで、妹も両親と一緒だ。雇っていた家政婦さんは俺が中学にあがる前にやめてもらったので、俺はこの家に1人暮らしだ。
―――よし、個人的な情報は間違いなく言えた。頭に問題はなさそうだ。次は今日の行動を振り返ってみよう。
6時10分頃起床。トイレで用を足し、朝食の準備を始めた。メニューはベーコンエッグと昨日かって置いた菓子パン。至ってシンプルだ。
その後、新聞を取りに行くため玄関に行き、扉を開けた―――少女を発見・・・・・・因果関係なし。訳が分からん。
どうして新聞を取りに玄関から出ただけでこんな事に遭遇するのだろうか?
たしかに、高2の5月ともなれば新鮮味の無くなった日々に何かしらの刺激というか、ハプニング的なものがほしいとは思うよ?俺だってよく考えてるからね?
けど、いくら何でも『朝起きて 玄関出たら 少女いた』みたいに、それほど大きな刺激は求めてないよ!?
しかも、何で俺の所!?他の人の玄関前で良いじゃん!!そして、新聞やテレビで取り上げればいいじゃん。それだけで近所に住んでる人には十分すぎる刺激だから!!
それとも何ですか?俺を人の見せ物にして楽しみたいんですか?辱められてる俺を見て喜びたいんですか?罰を与えたいんですか!?
神様!!俺が一体何をしたと申すのでしょうか!!
「・・・・・・はぁ」
ぷすぷすぷす・・・・・・。頭から煙が出ているようだ。・・・・・・天罰か。
とりあえず膝を崩し、一通り悶絶、神への疑問をぶつけた俺は立ち上がり、さっきの少女をどうにかするべく玄関の扉を開け・・・・・・ようとしたのだが、手が止まった。止まってしまった。
なぜなら、既に少し扉が開けられていて、さっきの眠っていた(様子の)少女がその隙間から俺を見つめていたからだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
互いに何も発することなく、目と目で見つめ合うこと約3秒。
その少女はやはり何も言わずに、パタンと音を立てて玄関の扉を閉めた。
「・・・・・・いやいやいや!!あの女の子何してんの!?っていうか、俺も何してんの!?」
俺は急いで扉を開けた。
すると先ほどの少女は、ちょうど扉のぶつからないところに立っていて、俺を見つめてきた。とても澄み切ったきれいな目だった。
さっきはよく見られなかった少女の顔は端正で、それでいて幼げな顔つきだった。
ただ、そんなことを感じる前に1つだけ言いたいことがある。・・・・・・言うぞ?せ?の、
「キミ、誰?」
「龍宮つづり」
まるで、俺が何を聞くのか分かっていたかのような、ナイフのような切れの良い返事。
これが、後に衝撃を与えてくれる龍宮つづりとの出会いだった。
とびらの前に