誕生日 前夜祭
またの名をひねくれ少女と申します。
内輪ネタ。とにかく内輪ネタ。
雛倉さんは女子。身長低めの女の子ですよ。
イケメンで、スラックスはいて、一人称俺だけど、女の子。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
雛倉綾女の場合
「綾ー、誕生日おめでとー」
朝、教室に着くと、俺の後ろの席で、友人である新山初(にいやま うい)が声をかけてきた。
「明日だけどな」
俺、雛倉綾女は明日、つまり三月二十日に十六歳の誕生日を迎える。
春分の日で祝日の為、当日にプレゼント貰ったり、祝われたりするわけでは無いのが少し残念だ。
「ひなさん、明日誕生日なんだー! おめでとー」
「おめでとー」
次々におめでとうを言われ、俺は嬉しくなった。
「ありがとな、みんな」
ニコッと笑いかける。すると、何人か女子が頬を赤らめたのは……気のせいか。
「はい、おめでと」
右隣に座る友人の竹添千代(たけぞえ ちよ)がポッキーの箱を渡してきた。
「千代、おはよ。ありがとな」
「私の時も貰ったから」
表情を変えずに淡々という彼女だが、彼女の誕生日にポッキーをあげた時は笑顔を見せた。
あの時は可愛かったなー……
「ねぇ、綾!」
朝のSHRが終わって、後ろから初が声をかけてきた。
「んー?」
「明日は海斗くんとデート?」
そう言われ、振り向くと彼女はニヤニヤしていた。
「ばっ、べっつに、デート、なんて……」
「デートなんてー?」
「す、するけど……」
恥ずかしくなって思わず初から視線をそらす。
「良いなー」
初が机に突っ伏す。
「何が?」
千代がケータイから顔をあげて初にたずねる。
「何が、って千代! 綾のスカートだよ! 海斗くんに頼んで写真送って貰おうかなー」
「初の気にする点はそこなのね……」
千代が呆れたように言う。
「え、俺スカートはかねーけど?」
今までだって二回程私服デートはしてきたが、二回ともショートパンツだった。
打ち上げもなんだかんだでスカートは履かなかった。
初は以前から早く私服でのスカート姿を見せろ、と言っていた。
「嫌」
初はむすっとした顔で言う。
「嫌って言われても……多分ねーし」
「買いに行け」
「選ぶの苦手なんだよ」
困って、助けの眼を千代にむけるが、くすっと笑っただけだった。
この白状者!
「千代、今日の午後暇?」
「生徒会無いし、今日は一時完全下校だからね。
買い物でも行く?」
なんだか嫌な予感がする……
「俺は、別に……」
「綾も行くよね、買い物?」
初に微笑まれて(あれは微笑みとは言わないかもしれないが)俺は嫌とは言えなかった。
「金……無いけど」
いや、実際はある。親の仕事の手伝いで小遣いは稼いでいる。
「私と千代からのプレゼントってことで。大丈夫、千代?」
「平気。とりあえず八王子かな」
「そうね、んじゃ逃げないでね、綾」
初がそう言ったタイミングで先生が来て、その話は一旦そこで打ち切りとなった。
放課後
「綾ー、帰るー?」
彼氏である橋谷海斗(はしたに かいと)が声をかけてきた。
「あ、悪い、今日は……」
「愛しの綾女姫は頂いてくなりよー!」
初が私に後ろから見せつけるように抱きつく。
「明日には返せよ、俺の姫だ」
こいつは、どうしてこうも照れるでもなくさらっとこういう事が言えるのか、
俺は不思議で仕方ない。
「超絶美人にして返してやんよ!」
初は得意げにして言った。
もう、俺逃げたい……
またも助けの眼を千代に向けるが、楽しそうに微笑んで返されただけだった。
「おー、頼むわ。じゃ、綾、明日な」
「あ、お、おう」
彼は手を振り、教室から出て行った。
「じゃ、私たちも行こっか」
「そうね」
はぁ、本当に行くんだ……
俺は小さくため息をついた。
でも、ま、三人で遊びに行くのも久々だしたまにはいっか。
そう思ったのはまだ落ち着いていた昼の教室。
二人との買い物の感想としては、疲れた。
とにかく着ては脱ぎ、着ては脱ぎ、さぁ次の店。とその繰り返し。
完全に二人に連れまわされ、八王子の駅ビルだけでは飽き足らず、
京八まで連れて行かれた。
完全に二人に任せてしまい、上下で買ってもらってしまった。
「ごめんな、こんなに……」
「謝らなくて良いって。金欠になったら海斗くんにねだるから。ねぇ、千代?」
「そうね、アイスでも奢ってもらおうか?」
「あら、素敵」
楽しそうに話す二人。
「ほんと、サンキュ」
「お礼は貴方のその笑顔と惚気話でよろしくってよ、奥様」
ニッと笑う初。
「楽しんできてね」
微笑む千代。
「おう、じゃな!」
俺は笑って手を振る。
明日がちょっと楽しみになってきた、そんな夕方の駅前。
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誕生日 前夜祭
内輪ネタ。←大事
橋谷くんのノリの良さ素晴らしいね。
私あんまり好きじゃない感じのベタベタするんだろうな、彼は。
雛倉は嫌がりそうだけど。
書いて満足したから良し。
明日も気が向いたらあげる!