正直者
外に出ると、太陽がじりじりと頬を照らした。
さっき入念に塗ったばかりの日焼け止めが汗と一緒になって流れ出る。
それをぬぐうのもうっとおしくて、綺麗にアイロンを掛けたばかりの髪を半ばやけくそでひとつに結ぶと
携帯とハンカチをポケットに突っ込んだ。
「だから、嫌だったのよ。こんな時に外に出るのは。」
唯子は小さく愚痴をこぼした。
ことの発端は定期テストも終わり、夏休みまであと10日もないだろうというころのことだった。
受験も迫った7月の末。
遊びたいけど勉強もしなければならない。
そんな思いが入り混じった複雑な心境でこれからの夏休みを過ごさなくてはならないのがこの学年だ。
だからか教室には重い空気が漂っていた。
「唯子ー暑いよー勉強嫌だよー。」
奈央子は大量の参考書が積み重なった机でペンを走らせる唯子の背中に思いっきりのしかかった。
「そんなことしたら余計暑くなるでしょ。離れて。」
「えーだって勉強してばっかりいる唯子見てるだけでこっちが暑くなっちゃうよー。」
「いいのよ。勉強やめたところで涼しくなるわけじゃないでしょ。」
「もうっすぐそうやって理詰めするー!」
奈央子は無理矢理に唯子のペンを取り上げるとふふんっと笑って見せた
「なーによ?なんか私に恨みでもあるわけ?」
「別にないけどさぁ…なんかいいことないかなぁーって。」
「だーかーらー…」
正直者