超能力
病室のベットで妻がカバのような大欠伸をして目を覚ました。
「ここ病院?」
「お前、駅の階段で転んで病院に運ばれたんだ。心配でメシも喉、通らなかったよ」
俺は少し誇張していい妻の手を握り喜びを伝えた。
「嘘、昨日の夜、国道沿いの焼肉食べ放題行ったでしょ」
「ど、どうして?」
妻は目を閉じ、俺の手を両手でギュッと握り返した。
「今朝はコンビ二でおにぎりね?」
「それって・・・・・・」
「読心能力が目覚めたみたい、わたし」
退院後、金儲けになると考え妻の力を数週間かけて研究したが、結局は読心できるのは『俺の食事』だけという貧相な超能力だった。
それから数ヵ月後、今度は俺が会社の階段で転び頭を打って病院に運ばれたのだった――。
(了)
超能力