超能力

超能力

 病室のベットで妻がカバのような大欠伸をして目を覚ました。
 
 「ここ病院?」

 「お前、駅の階段で転んで病院に運ばれたんだ。心配でメシも喉、通らなかったよ」

 俺は少し誇張していい妻の手を握り喜びを伝えた。

 「嘘、昨日の夜、国道沿いの焼肉食べ放題行ったでしょ」

 「ど、どうして?」

 妻は目を閉じ、俺の手を両手でギュッと握り返した。

 「今朝はコンビ二でおにぎりね?」

 「それって・・・・・・」

 「読心能力が目覚めたみたい、わたし」

 退院後、金儲けになると考え妻の力を数週間かけて研究したが、結局は読心できるのは『俺の食事』だけという貧相な超能力だった。

 それから数ヵ月後、今度は俺が会社の階段で転び頭を打って病院に運ばれたのだった――。

 (了)

超能力

超能力

クスッと笑える【超短編小説】 あなたが欲しい超能力は何ですか? この夫婦が手に入れたのは・・・・・・。

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-16

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