豪快電話
いつものようにN部長が豪快に笑いながら誰かと電話している。
フロア全体に聞こえるような大声だから、正直いって仕事の邪魔だ。重役の親戚だから部長をしているだけで、大した仕事をしていないと聞いたことがある。
ふと見ると、N部長が豪快に笑い胸をそらした弾みで、電話のケーブルが抜けてしまった。俺は吹き出しそうになった。
が、奇妙なことにN部長の楽しげな電話はまだ続いていた。
俺はあることに気づいて呆然とした。
そうか・・・・・・。
N部長はこれまで、電話で仕事をしている一人芝居をしていたんだ。
俺は哀れみと同時に少し親しみを覚えてしまった。
あとで誰も気づかないうちに、そっと電話のケーブルを接続しておいてあげよう。
(了)
豪快電話