ー先入観ー
-先入観-
エピローグ. 株式会社AS(エース)、ASは一世を風靡(ふうび)した会社だ。主にパソコン等を製造、販売している会社。去年の売り上げは1兆を越し、確実に来年も売れる、と社員は思っていた。だが、そんなある日事件がおきた。ASの社長、黒田証(くろたあかし)が自殺したのだ。だが、そこに現れた合間豪(あいまごう)は「自殺ではない。他殺だ」と目論(もくろ)んでいた。合間は巷(ちまた)で有名な探偵で、何事件をいとも容易く解決してきた腕利き探偵だ。そんな合間が今回の事件に挑む。
1. 「えぇ、死亡推定時刻は午後1時。目撃者の証言によると、『上から目を閉じて落ちてきた』との事だ」刑事はメモ帳を閉じた。「これは自殺ですね」警部に言った。「うーむ、確かに自殺と断定も出来るなぁ。屋上には靴を綺麗に並んでいるからなぁ」「ですから・・・」「だが、まだ断定は仕切れない。一応社員にも事情聴取をしておくか」被害者は株式会社ASの社長、黒田証だ。屋上から投身自殺をした、と警察は言っているが、それは違う。これは他殺、だけど証拠がない。合間はそう思っていた。合間豪、一番最初に出くわした事件にいとも容易く解いたことから巷で有名な探偵となり、それから難事件を何個も解いてきた探偵だ。「おぉ、合間君、よく来てくれたね」「おぉ、これは警部さん。ご苦労様です」「では、早速本題に入ろう。この事件なんだが・・・」「もう大体は分かっていますよ。刑事さんに聞いたんでね」「おぉ、そうか。なら話は早い」「先に言っておきます。これは『他殺』です」「何ぃ!!?」「まぁ証拠がないので証拠が見つかり次第言いますよ」「うーむ・・・」警部は首を傾(かし)げた。
2. 「社長の変わった所?うーん、そこまでないと思いますよ」「そうですか・・・」「警部、社員から事情聴取をしたんですが、社長の変わった所はないらしいです」「そうか・・・目撃者に事情聴取をしたのか?」「いえ、まだ」「なら早くしろ!!」「はっはい!!」警部は合間の言った言葉に悩まされていた。これが他殺?笑われるな。警部はフッと鼻で笑った。それから10分後、刑事が帰って来た。「してきました。目撃者の赤貝聡(あかがいさとし)の話によると、社長の変わった所はない、とのことです」「うーむ、変わった所がない、となると他殺か?いや、これは自殺に決まっている。秘書に事情聴取をしたんだろ?どうだった?」「それが、秘書は社長は大黒字になり、お金をかなり遣っていた、との事です」「そうか」警部ははぁー、と溜息を吐いた。もしかしたら合間の言う通りかもしれない。また奴に一本取られるのか。
3. 「警部さん、分かりましたよ」「何だ?」「犯人が、です」「何だと!!?」「まぁ、お静かに」合間は警部に耳打ちをした。すると警部は怒鳴った。「そんな机上の空論を信じる事なんて出来るか!!証拠を持って来い!!」「そうですか、ではつれてきます」「何だと!!?」すると目撃者の赤貝が来た。「さぁ」「お・・・俺が社長を殺しました」「っ!!」それから溜息を吐き、合間に聞いた。「これはどういう事かね?」「まぁ順を追って説明しますよ」
4. 「警部は先入観、と言う言葉を知っていますか?」「あぁ、知っているぞ」「この事件は先入観を利用したものです」「何?」「屋上に靴が並んであると、常人は自殺だ、と思い込んでしまう。だけど最近は自殺するのに靴を並べるなんて事はしないのですよ」「そうか・・・」「このビルは65階建て、その屋上から落ちた、となるのなら、社長の体はバラバラになってもおかしくない。恐らく屋上から落ちたのではないでしょう。15回の窓が開いていました。恐らく犯人はそこで社長を落としたのでしょう」「ほぅ」「そして肝心の証拠、社長の遺体を見ましたか?しっかりと靴を履いていました。じゃあ何で屋上に靴が並んでいたのでしょう?犯人が脱がせるのを忘れたのでしょう。屋上の靴には犯人の指紋がある。そして鑑識に回した結果、赤貝さんの指紋が出てきたんですよ」警部は黙っていた。「けど何で社長を殺したんだ?」赤貝は警部の言葉に小さな声で返した。
5. 「社長は・・・会社が大黒字にも関わらず、俺の給料を全然上げなかったんだ。そしてある日、こういわれたよ。クビだってね。社長は天狗になりすぎているんだ。あの会社の計画を立てたのは俺なのに。社長が直々に俺に聞いてきたんだ。起業者になりたい、アイデアが欲しい、って。それで俺が考えた事をそのまままねをし、今の地位を築いたんだ。その後も俺は必死に社員として頑張った。そしてあの売り上げをたたき出した。なのに社長は俺の給料を全然上げなかった。そして会社の一生が保障された時、クビって言われたんだ。図々しいにも程がある。だから殺してやったんだ。画竜点睛を欠いてしまったね」それから赤貝はパトカーに乗り込み、パトカーはサイレンを鳴らしながら右折した。
エピローグ. はぁー、合間は溜息をついた。あの事件、警察は何で解けなかったんだろう。あれは普通考えて分かることだ。合間はそれを考えていた。そして合間の携帯が震えた。メールが届いたようだった。「合間さん、また事件です」合間は着替えて事件現場に向かった。
ー先入観ー