無くしたもの、てにいれたもの
世界トップ5に入る程の強さと優しさを持っていた国『百頼(びゃくらい)』の首都天秤は、境界線という名の壁で両断された。
両断を決断し、実行したのは愛染王。
だが彼は後悔した。
自分が持つ『目』が導き出した事を実行しただけだというのに、争いは更に激しくなってゆく。
それから20年。
激しくなった戦いは、ついに若い世代をも巻き込んでいった。
「王を殺せ」
その願いを持って。
魔法能力を持たぬ者が集まる東の都『唖叶』現王・愛染。
魔法能力を持つ者が集まる西の都『青牙』現王・不動。
もう元には戻れない。
決断せよ、少年少女。
最後の結末は君たちが決めなさい。
第1章始まりの封が切れるとき
今から20年前、戦争は始まった。他の国からすれば、治安が悪いだけだと思われるだけかもしれないが、戦っているこちらとしてはいささか不本意だ。
いくら戦争と言っても、永久的に全員が戦うことはない。
だが非戦闘員である者は、この戦いを引き起こした愛染を少なからず恨んでいた。それは唖叶や青牙の者に共通して言えることで、入させられた若者達も同様の事を思っているかもしれない。
天秤を2つに裂いた張本人、愛染は未来を視たから裂くことを実行した。彼は未来を見る『目』がある。
そこには、魔法能力ある者と無いものを分けると有益な事が起きるとでていた。
しかし今はどうだ。更に争いは激しくなり、青牙に新しい王が誕生し、絶対服従の都と化しているではないか。
そして、能力を持たぬもの達は超常現想と書いてエターバという能力が開花した。
それは志同じくして戦う者以外ーー非戦闘員ーー唖叶で普通に生活している者でさえ。
無くしたもの、てにいれたもの