リミット 序
静岡から上京してきた康平は会社で信頼されるほどの実力をつけていた。しかしそんな矢先一通の封筒が届く。康平は制限時間内に日本を守ることができるのか・・・・・
辺りは高層ビルが立ち並んでいる。土曜日の渋谷というとチャラチャラした若者や、手を繋いだりお喋りしながら歩くカップルがよく目につく。しかも今日は単なる休日ではない。クリスマスイブなのだ。まだ朝の9時半だというのに渋谷の街は大騒ぎである。大通りの両側に連なる並木にはたくさんの電飾が施され、すでに明かりが灯っている。まだ明るいので電飾の色はオレンジっぽいオーソドックスなもので灯りが見えやすい。今年は2週間ほど前からイルミネーションが始まっているが白と青の電飾が多い。今年のテーマは「ミッドナイト」だそうだ。アダルトな雰囲気が良いと大人からの評判は良いらしい。
駅前のスクランブル交差点の歩道の信号が青になるといつものようにイワシの群れのように大勢の人が歩き出す。今日は特にだ。
その交差点に猛スピードで一台の車が向かってくる。信号が近づいても全く減速する気配はない。もちろん信号は赤だ。しかし、そんなことは見えてないかのように走ってくる。ブレーキランプも点いていない。停車している車の間を縫うように猛進してくる車はこのまま横断歩道に突っ込むつもりだ。歩行者は徐々に危険に気づいたのかたくさんの人が悲鳴をあげながらダッシュする。パニックになりその場に座り込んでしまう人もいる。そんなことには構わず車は横断歩道に突っ込んだ。車はグネグネと蛇行運転をし、人を避けていく。ブレーキは全くきいていない。しかし、人ひとりもぶつかることなくまっすぐ突き抜けていった。
リミット 序