な か み
走り去るように毎日はめまぐるしく過ぎて行き、
私は生き急ぐように大人になった。
私の身体はすっかりと『女』だというのに、
ふとした瞬間に心の奥底で、
まだ母を求めて泣きわめく幼い子供のままの私をみつける。
いつもあなたといるときに。
とにかく振り返るまもなく大人と言い聞かせてきた私が
ゆっくりと破られていくその感じがむず痒く、
それが許されてしまうことが何か悪いことでもしているようで、
甘く、美しい、毒の花の蜜を吸うよう。
味わった後に、
あなたの滑らかな油がその病んだ胃を覆ってゆくのを恐ろしくスローな瞬きで味わうのは、
とても贅沢な永遠だ。
出逢ったその瞬間から死へ向かう恋人へ、
私のこのあり方はあなたの命を輝かせているのだろうか。
それともいっそうその命の炎を燃やしたばっかりに、
浮かび上がる「 さ よ な ら 。 」
あなたの中の隅々にまで明かりを当ててあげよう。
当たり前に隣にいよう。
それが許される うちはね。
恐ろしく深い穴に落ちていくことも、
大空を飛ぶこともきっと同じで、
あなたでなきゃ、
あなたでなきゃ、
知らなくて済んだのに。
一歩踏み込んだら戻れない美しく儚い人の愛に触れてしまった女は、
もう 引き返せはしない。
後は同じ。
落ちるでも昇るでもなく、道が現れたというだけ。
あぁ、恐ろしく心地よい。
な か み