聖女の遺骨求む
エリス・ピーターズ著作の修道士カドフェルシリーズの第1巻です。
修道士カドフェルとは歴史時代物の小説で、イングランドの昔の時代が舞台です。
若い頃に十字軍に従軍したカドフェルはその生活を悔いて修道士になりました。
その修道院とその周りの街の事件を解決する話です。
聖女の遺骨求むは、信者を増やすために修道院の出世組の人々が聖女の遺骨を修道院に迎えて奇跡を起こしたいという欲のために、遺骨を求めにウェールズに旅する話です。
修道院長は旅に出れないので、腰巾着の修道士達が同行します。
そこになぜかカドフェルが選ばれます。
カドフェルはそういった政治的な話に興味がないのですが、ウェールズ生まれのためウェールズ語が話せるということで通訳を命じられます。
カドフェルは最初からこの旅の目的を良く思っていませんでしたが、修道院長代理の横柄な態度でウェールズの人々を怒らせてしまい、話がこじれます。
そこから、土地の領主である男が殺され、犯人は修道士達か村人かといった展開になっていきます。
村人達は昔からある聖女の遺骨を自分達の守り神だと思っており、手放す気がありません。
そこでは数々の奇跡が起こったということで、修道士たちは益々乗り気です。
いまにも奪い去っていきそうな勢いです。
カドフェルの部下というか側仕えの修道士がウェールズの女性と恋に落ちます。
カドフェルはそれを許します。
カドフェルは普通の修道士とは違い、40歳になってから入信したので、俗世のことに精通しており、その手のことに寛容です。
カドフェルは側仕えの修道士を可哀想に思っており、そのままウェールズ人の女性と住むことを推奨します。
カドフェルは彼が若くして修道士になり、まだ俗世間のことをなにも知らないことを残念に思っていたからです。
この時代は戦争で孤児になり、修道士になった少年が多かったようです。
この側仕えもそのうちのひとりでした。
また、修道士になるには何かが足りないとも思っていました。
本人はやる気があるのですが、空回りしている感じだったからです。
長く生きたカドフェルならではの視点だと思います。
意外な人物が犯人で、驚かされます。
ただカドフェルの機転により犯人は隠されます。
そして謎の遺骨はシュルーズベリの修道院に埋葬されます。
とてもおもしろい最後のオチがついてます。
一読の価値ありです。
聖女の遺骨求む