Ⅳ December

December

あっという間に三ヵ月経過。もう十二月。微妙な三ヵ月。


母の日課の散歩に付き合ったついでに、BIKESHOPのカフェへ立ち寄った。
定番散歩コースが終わったあたりに丁度よく店があるのだ。
午後の程良い時間帯。
常連客らしい人達で中央の席はいっぱいだった。
壁際のソファ席へ落ち着く。

この席、当たり。店が広々と見渡せる。
それに、壁にショップ関連の写真が数枚飾ってあって、真木くんがいっぱいいた。
真木くんだけの写真まで飾ってあった。

この店では、真木くんはどういうポジションなんだろう。
写真の雰囲気からは、何気にこの店の要っぽいスタッフのように見えたり。
特別主張してみえるような存在とは違うけれど。
写真の他にもかわいい小物やおもちゃがおいてあって、面白い。
おもちゃを手にとって遊びながら、お茶とケーキを頂く。
型抜きクッキーが二枚のったチーズケーキにフォークをいれようとした時、
先に母にクッキーを一枚とられてしまった。散歩の後の休憩タイム。
少しのんびりすると、母は夕食の支度があるからと先に帰っていった。

カフェで会計を済ませた私は、一人BIKESHOPの方へ入って行った。
今日は人の気配をあまり感じない。レジのところに客が一人。
前にクロスバイクのメンテで対応してくれたスタッフの今井さんが、接客中だった。
真木くんは、今日は姿がみえなかった。少しがっかりしたり。

そろそろ寒くなってきたので自転車用のグローブでも手に入れようと店内を物色し始めたのだが、
イマイチサイズが合うものがない。
今井さんに尋ねてみようと思うのだが、レジにいた客がこの日唯一店頭にいるスタッフの今井さんを
ずっと一人占めしていた。
店内をウロウロしながら、今井さんが空くのを待っていたが、なかなか空かない。

仕方なく、奥のテックスペースの方でバイクを触っている別のスタッフの男性に
声をかけることにした。顔は知っていたが、なんとなくシャイで無口な人のようにみえて
まともに話したことは一度もなかった。テックスペースの方にヒョコッと顔をだしてみる。

「こんにちは~。すみません。グローブが欲しいんですけど、
サイズなんかはもうでているだけなんですか?」

こんにちはと声をかけた瞬間、「え?なに?」というような
ちょっと驚いた顔だったけれど、すぐに丁寧に対応してくれる。

「商品はでてるだけだけど、取り寄せもできますから。」

バイクを触っていたその彼は、シャキっと姿勢を正してそう答えてくれた。

「ああ、そうですか。わかりました。すません。」

笑顔をつくって礼を言い、BIKESHOPを後にした。
残念なことに、真木くんはこの日、ショップのイベントに駆り出されていたようだ。ちぇ。
最後に声をかけたスタッフの男性、なんだか私のことを見た時の表情が…
何故か何かすごく驚いたような顔だった。なんなんだろう。





いくつになってもと思うことって結構ある。

もう好きな人なんてできないのかなぁと思ってたけど、思いがけず、好きな人ができた。
好きな人なんてなかなかできないんだけど。
本当に久しぶりに好きな人ができたことに、実は感動していたりする。
そして、今まで好きになった人のなかで、一番の人のような気がしている。
これだけでも結構幸せだったりするんだけど、
好きなだけで終わらせたくないなという気持ちがでてきたりして。

でも、どうしていいのかよくわからなくて。
いくつになっても好きな人ってできるんだなと。
いくつになってもどうしていいかわからなくて悩んだり。
いくつになってもいろいろあるねぇ。

表情

笑顔

気持ち

価値観

行動力

スタイル

大きくてきれいな手

かわいいところ

かっこいいところ

落ち着いているところ

やさしいところ

私を気にしてくれるところ


彼の好きなところは、たくさんある。彼に出会えてよかった。
気にしていると、知らず知らずにアンテナがたっちゃうのか、気になることが多くなる。
最近のBIKESHOPのツイッターの内容…なんだか何かを感じるメッセージのような気がしたり。




クリスマスの三連休、またBIKESHOPに来ていた。
春になる頃にロードレーサーを購入しようと考え、
昼過ぎからかおりちゃんとショップを数軒見て回った。
夕方暗くなってきた頃、最後にやってきたのがBIKESHOPだった。

店に入ると真木くんをすぐに見つけた。テックスペースでバイクを触っている。どうも忙しそうな様子。
二階へ行ってみたり、ロードレーサーをチェックしたりして暫く店内をウロウロしていると、
テックスペースにいる真木くんと目が合った。

「こんばんは。」

「こんばんは。」

まだ彼はバイクを触っている途中だったので、軽く挨拶。
そうこうしているうちに、スタッフの花田さんに声をかけられ、
ロードレーサー購入について色々と話を聞き、
来年度モデルのカタログまでもらった。
男の子っぽい雰囲気もあるのだが、今時珍しいような素朴で素直な感じのかわいい女の子。
私に気付くといつも笑顔で声をかけてくれるようになっていた。
年内に顔だしておかなきゃ、クリスマス頃には顔だしておかなきゃと思いながら
BIKESHOPに行ったんだけど、真木くんはこの日ずっと忙しそうだった。

十八時過ぎにバタバタと店を出て、街へ向かった。
夜は別の友人も加わり、すきやき忘年会の約束。
店のおばさんが、慣れた手つきで楽しくすきやきを作ってくれる。

美味しそうな料理にイチイチ歓声をあげ、おばさんとなんだかんだと掛け合いしながら、
美味しいお肉に舌鼓を打つ。
女性だけの集まりというのも独特の雰囲気で楽しいものである。
年の瀬も押し迫り、今年も残り僅かとなっていた。


いい大人だというのに、少しせつない1年の終わり。
少し甘い気持ちのDecember。

Ⅳ December

Ⅳ December

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-12

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