それでもあなたを愛してる

あなたが他の人を見ていても構わない
私はあなたを愛しています
いつまでも…
たとえ振り向いてくれなくてもいい
私だけを見てなんて言えない

第一章

「先生、お腹痛いから休ませてもらってもいいですか?」
杏は保健室にはいると言う。
しかし、保健医である芦田和希はおらず首を傾げるとベットの方から寝息が聞こえ、ベッドの方へ近づきダメだと思いながらもカーテンをそっと開けてみると芦田和希は眠っていた。
「ん…佐久良…すまない…」
「…先生?」
杏は無意識に呼ぶと和希は静かに目を開ける。
「あ、あぁすまない。眠ってしまっていたようだ。どうかしたのか?」
「あ、お腹痛いので休ませてもらってもいいですか?」
「ああ、構わない。何か温かいものでも飲むか?」
「ありがとうございます、それではお言葉に甘えていただきます。」
2人の間に沈黙が続いた。
杏はそれに耐えきれず先程の寝言を聞いてみた。
「あの、先生?先程寝言で佐久良という人に謝っていたんですけど」
その質問を聞いて明らかに焦っていた。
「気にしないでくれ。」
素っ気なく言われそれ以上は聞いてないと判断し、杏はそれ以上聞くことはなかった。
いや、それ以上は聞けなかった。
あまりにも、悲しそうな顔をしていたからだ。
そのまま他愛のない会話を続け気付けば放課後になっていた。
「もう放課後になってしまったな。お腹の痛みは和らいだか?」
「はい、大分良くなりました。ありがとうございました。」
「そうか、それならよかった。」
和希は少しだけ微笑んだ。
「…っ、さよなら!」
杏が帰ってから和希は1人椅子に座り杏が出ていった扉をみながら呟いた。
「あの子は佐久良に似ている。しかし、もう二度とあんな思いをしたくない…」
その呟きは誰かの耳にはいることなく夕焼けの空へと消えていった。


「佐久良さんかぁ…誰なんだろう…」
杏は1人帰路につきながら考えていた。
しばらくすると家に到着したことにようやく気が付いた。
それだけ考え込んでいたのであろう。
家の扉を開け、中に入り誰もいない家にただいまと言う。
これは小学校の時からで慣れている。
親は2人とも朝から仕事に行き帰ってくるのもほとんど深夜だ。
なので、杏と両親はほとんど顔を合わさない。
階段を登り自分の部屋へ行き部屋着に着替え夕飯を作り始める。
これもまたいつも通りの行動だ。
しかし、今日は失敗することが多発した。
かずの事を考えていたからだ。
(なんでこんなに先生のこと考えてるんだろう…
佐久良さんのことが気になるのかな…
でも他人なんだけどな)
自分の思考に疑問を抱いていた。
その後、食事を済ませ少しだけテレビを見たあと風呂に入り眠りについた。

第二章

翌日、杏は熱っぽい体を無理やり起き上がらせ三十分かけて支度をし朝ごはんを食べず学校へ向かった。
学校につき、授業を受けてる間も頭の中にもやがかかったかのようにぼーっとしていた。
ようやく、一時限目が終わり席を立つとよろめきながら階段を降りていると足を踏み外してしまい杏はギュッと目を瞑り衝撃に耐えようとしたがいつまでたってもその衝撃が体にはしらずそっと目を開けるとそこには白衣の布が見えた。
顔をあげると和希が杏を受け止めていたのだ。
「大丈夫か?!」
「あ、はい。大丈夫です…」
「お前、なんか顔色が悪いぞ?それに体温も高い。」
和希は杏のおでこに手を当てる。
「…?!」
「ちょっと、ごめんな?」
和希はそういうと杏を抱き上げ保健室へと連れて行った。
行く途中誰とも会わなかったのは不幸中の幸いだった。
「ほら、体温計。」
「あ、すみません。」
=ピピピピ=
「38.2分か…大分熱があるのになぜ学校へきた?」
「それは…」
「ハァ、まぁいい。とりあえず今日はもう帰りなさい。そんなふらふらな体じゃまともに歩けないだろう?俺が送って行こう。」
「すみません。」
「俺がお前の荷物をとってきてやるから俺が戻ってくるまで寝ていなさい。」
「はい…」
杏をそのまますぐに眠ってしまった。
しばらくすると心地よい車の音が聞こえてきたので目を覚ますとそこは車の後部座席だった。
「先生?」
「ああ、起きたか?気持ち良さそうに寝ていたから起こすのが悪いと思って起こさなかった。」
「すみません…先生?学校はどうしたんですか?」
「学校は俺も早退することにした。」
「え、でも…」
「いいんだよ、お前送るって言う口実でサボれるし。」
どう反応したらいいのかわからず杏は黙り込んでしまった。
しばらくすると自宅につき和希にお礼を言い家の中へと入って行った。
そのまま次の日の朝まで目を覚ます事なく眠った。
杏にとってこんなに気持ちよく眠れたのは初めてだった。

それでもあなたを愛してる

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それでもあなたを愛してる

叶わない恋をしてしまった高校生の杏 なかなか昔の恋から抜け出せない保健医の和希 2人は交わらないはずだった しかし、2人は次第に惹かれていく それは、哀しい悲しい恋の話…

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 成人向け
更新日
登録日
2013-03-11

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  1. 第一章
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