ココロのお願い

ココロのお願い

ココロのお願い


 ココロは、とある王国のお姫様だ。
 王様はココアドで、妃はクルミという名前だ。
 ある日、ココロが城下町を歩いていると、古本屋で面白い魔術書を見つけた。
 その魔術書は『悪魔誕生』と書かれてあった。
 ココロは、そういうオカルトチックな本が大好きなのだ。
 さっそくお小遣いで買った。
 古本屋の主人は顔なじみでもある。
 ココロは、いつもよりは多めにお金をあげておいた。
 帰って自室で早速本を読もうとすると、母であるクルミ王女がココロをしかりに来た。
「ココロちゃん、また一人で外に出かけたでしょ? 駄目よ。いつも言ってるでしょ。出かける時はママに頼んで、護衛兵についてもらわないと」
「だって護衛兵って、買い物させてくれないもんっ」
「あのね、欲しい物はなんでもパパが買ってくれるでしょ?」
「わたしは自分で選んだ本がいいんだもん……」
「あ、さてはまた悪い本を買ったのね。パパに言うわよ」
「え〜ん、言わないでぇ。お願い、ママぁ」
「今度だけよ……次に勝手に外に出たらパパに言うからね」
 そう言ってクルミはココロの自室から出て行った。
「ふぅ、ママって世界一私に厳しいんじゃないかしら……」
 ココロはクルミが言ったのを確認すると、さっき買った魔術書を開いた。
「悪魔誕生……かぁ」
 ココロはワクワクしながらページをめくる。

 《悪魔を召喚するには、この呪文を唱える必要がある》

 左ページには絵で悪魔が描かれており、右ページには呪文が載っていた。
「へぇ、悪魔ってこんなに簡単に召喚できるんだぁ。あ、でもお金が一千万ティル必要とも書いてある……庶民のみんなには真似できないね」
 さらっと嫌味なことを言ったココロ。悪気はない。
「えいっ」
 ココロは貯金箱のブタを破壊して一千万ティル取り出す。
「お小遣い貯めといてよかったぁ。じゃ、呪文を唱えようっと。あ、注意書きが最後のページに書いてあるって。まぁ、いいや。ママが来る前に早く唱えよ……。え〜と、パッパカ、パッパカ、パラリラリ〜、悪魔さん悪魔さん、ランダム召喚、パッパカパ〜!」

 ココロはお金を両手に掲げ、呪文を最後まで言い切った。
 すると……ピンク色の煙がモクモクと魔術書から吹き出した。
「やった〜。成功かも」
 ココロが気づいたときには、目の前に真っ黒な悪魔がいた。
 嫌らしい目でココロの体を凝視している。
「わぁ、なんだか嫌らしい視線……あなた、悪魔ねっ」
「ふぅ〜っ」
 悪魔は大げさにため息をつく。
「俺っちをここに召喚したのはお前か?」
「そうよ、わたしよ。わたし」
「なら面倒くさいが三つだけ願いを叶えてやろう……三分以内に言え」
「え〜、三分? もうちょっと待ってよ〜」
「よし一つめの願いを叶えよう。もうちょっと待ってやる」
 それを聞いたココロは焦った。え〜、もう一つ願いが終わっちゃったの〜という感じに。
「じゃ、じゃあ。え〜と、わたしの胸を大きくして! わたしもう十八歳なのに魔法学校、小学生みたいって呼ばれるし……」
「よし、胸を大きくしてやろう」
 悪魔はそう言うと、ココロの背後に瞬間移動した。
「わ、すごい。消えた」
「後ろだ……」
 悪魔はココロの両胸を背後から揉みに揉んだ。
「いや〜! なにするのよ!」
「黙っていろ、人間め。バストアップマッサージだ!」
 そのあと三分後に、ココロの胸はAからFまで膨らんだ。
 その間、ココロは色っぽい悲鳴をあげ続けていたが……。
「本当だ、すご〜い。ジャンプしたら揺れる〜」
「悪魔だからな」
 悪魔は偉そうに言った。
「じゃあ、最後のお願い、私と友達になって!」
「な、なんだと」
「だって、友達ならいつでも願いを叶えてくれるでしょ?」
「お前、最後のページを読まなかったなぁぁぁあ」
 悪魔はそう言うと煙とともに消えてしまった。
 残されたココロは魔術書の最後のページを読んでみた。
「なになに、悪魔の撃退法……友達となってくれるように言う……え〜!?」

 そのあと、ココロは急に大きくなった胸で驚かれましたとさ。

 おしまい

ココロのお願い

ココロのお願い

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-03-10

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