リアルジャムお○さん
リアルジャムお○さん
~みんなの夢を守るため~
※第2話の予定はありません。
来る日も来る日も代わり映えのしない毎日。
パンをこねくりまわし、投げ、車を改造し、悪と戦うだけの毎日。
ジャムは思った。
「みんなの夢を守るとかいう超アバウトな目標なんて、達成できねぇよ!」
そしてジャムはさらに思った。
「中小零細はツライよ・・・」
高原のポストには、今日もみんなの夢がたくさんつまった、お手紙が届きます。
●保健所からの通知
①飲食店営業許可証を掲出してください。
直接工場での販売はしていないようですが、カバ夫さんという方より、市内の学校給食センターへの納品している、との連絡がありました。
移動販売の際も検査を受けてください。
まさか、無認可でしょうか。
②犬にパンをこねさせるのだけはやめてください。犬の肉球には何万という数の細菌がいます。
③従業員に手洗いの指導を徹底してください。食品衛生マニュアルがないことに加えて、従業員に普段の指導について聞いたところ、
「おいしくなあれ、おいしくなあれ。」
と呪文を唱えながらパンをこねなさい、と社長からは指導されている、とのことでした。
そういう問題ではありません。
④外に長時間野ざらしにしたアンパンを市民に提供するのはやめてください。特に夏場の暑い時期は細菌の繁殖しやすい時期です。
食パ○マン様のように、ちゃんと宅配車で運ぶなど、衛生管理を徹底してください。
それから、食パ○マン様とは個人的に時間を取りたいので、連絡先を教えてください。
⑤カレーパ○マンという方が、嘔吐物を市民に提供しているというのは本当でしょうか。
あの方は生理的に受け付けませんので、どうにかしてください。きもいです。
●労働基準監督署からの通知
①職場環境は非常に清潔に保たれていて良好です。
②電化製品もなく、節電に協力的なのは結構ですが、着ぐるみたちのコスチュームが暑苦しいので、クールビズを推奨します。中にいる人たちがかわいそうです。
③就業時間をきちんと定めてください。住み込み従業員のようですが、ア○パンマンさんという方は、顔を新しくするのみで(洗顔の意味でしょうか)24時間勤務だとおっしゃっていました。真実だとしたら大変な問題です。
●児童養護相談所職員からの手紙
先日お伺いした際に、
「ボク、劇場最新作で、宇宙人に拉致されたんだ」
と真顔で話す少年を見かけました。
大変心配です。
また、その子どもは、目の回りが黒くパンダのように黒ずんで落窪んでいました。
肝臓が悪いのではないでしょうか。
それから、愛らしい少女が、
「お姉ちゃんは、悪の心に染まって出て行ったの。私がイイ子にしていればきっと戻ってくる。」
と西の空を見上げながら涙ぐんでいました。
新興宗教でしょうか。
大変心配です。
●銀行からの通知
平成○年○月○日
パン工場 ジャムおじ様
督促状
前略 用件のみ申し上げます。
ご融資させていただいております下記金額のお支払いが所定の期限を過ぎ、何度か請求をいたしましたが、未だご入金の確認が出来ておりません。
恐れ入りますが、お支払いの振込をお急ぎくださいますよう、お願い申し上げます。
記
アンパンマン号改造費用として
1,000,000,000円
【お振り込み先】
○○銀行 ○○支店 普通○○○○○○○○
口座名義 株式会社ドリーミング
もしも○月○日までにご入金をいただけない場合は、法的手段をとるほか、停滞利息、請求手数料を加算して再度請求させていただくこともございますので、ご了承ください。
なお、○月○日現在の作成文書ですので、本督促状と入れ違いにご入金いただいた場合、どうかご無礼の程、ご容赦くださいませ。
・・・
・・・・。
●フグタサ○エからの手紙
あなたが家を出て入ってからもう15年になります。
元気にされていますか。
お仕事は順調ですか。
あなたが、
「サラリーマンなんてやってられるか!本当はずっとアンパンが作りたかったんだ!!!」
といって癇癪を起こしたとき、家族全員が驚きました。
あなたがそんなにアンパンを作りたかっただなんて、妻の私も毛頭想像にも及ばなかったからです。
大体あなたは、家事も手伝わず、主だった趣味も持たず、アナゴさんと飲んだり、父さんと囲碁を打つばかりの毎日だったじゃありませんか。
いまでもあのときの怒りは収まりませんが、もはやこんなことを今更言ってところでどうしようもないのでしょう。
家族の近況を報告しておきます。
カツオは、早稲田大学を出たまではよかったのですが、花沢不動産に永久就職し、今や不況の中、きりきりと目の回るような辛い毎日を送っています。
すぐに嘘をつくので、夫婦仲もうまくいっていないようです。
ワカメは、相変わらずパンツを見せたまま町を徘徊するので、一昨日警察にしょっぴかれそうになりました。「コウシュウワイセツ」という罪だそうです。
タラオは、いつのまにかお金持ちになり、ギロッポンヒルズという摩天楼に住むことになったイクラちゃんに影響されて、
「ITバブル、!ITバブル!!!」
とヒマがあれば叫んでいます。もはや私の手には負えません。「ベンチャー・ドリーム」という意味すら分かりません。
父さんはついに頭頂部の一本が抜け、ショックのあまり入院しました。
母さんは、
「亭主不在で嫁元気!」
と、家の主としてやりたい放題です。
そして私は、ついに美容院で、
「この髪型はもはや現代のカット技術では無理。この際ヅラにしませんか」
と、よもや父さんより先にヅラになりそうです。黒柳テ○子です。
こんな生活もう耐えられません。
最近あなたが、女と同棲している、といった噂を耳にしました。
本当でしょうか。
早く帰ってきてください。
そして私を安心させてください。
PS今月も養育費の入金がありませんでした。速やかにお支払いください。
・・・
・・・・・。
ジャムは思った。
「そろそろ家に帰るかな・・・。」
そんなさいたま市が生んだ英雄、増岡ヒロシの物語。
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